肥えた私腹を公開~ウクライナ

10万人を超えるウクライナの政治家や公務員の資産状況が10月末にネットで公開され、その巨額さに国内外で驚きの声があがっている。国際通貨基金(IMF)が支援継続条件として政府に実施を命じた汚職対策の一環で、議員や公務員は1万4,000米ドルを超える資産をリストアップしなければならなくなったのだ。

ウクライナでは、政財界の癒(ゆ)着でごく一部のエリート層だけが私腹を肥やしているのは公の秘密。ただ、今回は誰が何を所有しているのか、その実態が明らかになり、国民の怒りは大きい。

ポロシェンコ大統領は銀行預金2,370万ユーロに加え、ロシアを含む複数の国に100社以上の企業を保有する。地元週刊誌『ノヴォエ・ヴレミヤ』によると、資産総額は8億6,700万ユーロで、ウクライナ第4位の金持ちということになる。

アヴァコフ内相は住宅3軒を保有し、そのうちの一つは657平方メートルの広さがある。また、ワイン750本のコレクション、ピカソ1枚を含む芸術・骨董品コレクションも所有する。

フロイスマン首相は、現金87万ドルと46万ユーロのほか、高級時計のコレクションと住宅2軒を持つ。

ナシロフ税務関税局長は年間報酬が1,500ドルにしかならないのに、妻と合わせて現金116万ドルと45万ユーロ、高級時計・宝飾品コレクション、自動車4台、キエフの高級住宅街の5カ所に地所、住宅7軒を保有している。

ウクライナの法定最低賃金は月わずか51ユーロ。今年6月の平均手取り賃金(月額)は155ユーロにとどまっている。政治家や公務員のケタ違いな裕福さは信じがたい。

国民の怒りに配慮して今月から予定されていた議員報酬引き上げは見送られた。

この資産公開は、ウクライナ政府がIMFからの支援継続を確保するため、やむに已まれず行った側面が強い中央銀行が2014年以来取り組んでいる金融業界改革と並んで、不正な資金の流れを食い止める効果に期待がかかっている。

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