ハンガリー政府が法定最低賃金の引き上げと、社会保険料率(雇用者負担分)の引き下げを提案している。今後6年で実質賃金を最大40%上昇させる狙い。経済に悪影響が出ないように配慮しながら、実行に向けて雇用者・従業員代表と交渉を続ける方針だ。
ハンガリーの現行最低賃金は、非熟練労働者で11万1,000フォリント(約360ユーロ)、熟練労働者で12万9,000フォリント(420ユーロ)。ヴァルガ経済相によると、非熟練労働者について来年に15%、2018年に8%、熟練労働者については来年に25%、18年に12%引き上げる。
また、社会保険料は現行の28.5%から来年4ポイント、18年に2ポイント引き下げる。19~22年には、実質賃金上昇率が年6%を超えた場合、翌年から2ポイント引き下げる。
労組側は賃上げの方針に基本的に賛成している。一方、雇用者側は複数年を対象に合意を探る政府の姿勢を歓迎しながらも、提案の内容をそのまま実現するのは不可能とし、修正を求めていく立場だ。
今回の動きの背景には、国内の人手不足が深刻化している現実がある。政府は賃金上昇で人材の国外流出を食い止めたい意向だ。経済開発協力機構(OECD)の調べによると、ハンガリーは人件費に占める税・社会保険料の比率が49%とOECD諸国中で4番目に高い。このため政府は、社会保険料の引き下げを条件に企業に賃上げを要請する姿勢を示していた。(1HUF=0.37JPY)(東欧経済ニュース2016年10月26日号「ハンガリーは『量・質ともに人材不足』=自動車大手が警鐘」を参照)