高付加価値化目指すトルコの化学産業

トルコの化学企業が海外市場の伸び悩みにも拘わらず生産拡大を続けている。今年は医薬品の生産量が大きく増加している他、化学肥料も大きく伸びると予想されている。最近では特にプラスチック製品関連企業が積極的に生産性向上と競争力強化に取り組んでおり、製品の付加価値を向上させるため研究所を立ち上げるなど研究開発投資を進めている。

同国の化学産業は31万人の労働者を抱える主要産業の1つ。輸出にも力を入れており、同国産業界は2023年の輸出額500億ドルの目標を掲げる。しかし15年の輸出額は177億8,590万ドルに留まり、200億ドルを上回った14年から15.3%減少した。今年上半期の輸出額も精製油の価格下落などの要因により前年同期から11.7%減少している。

同国の化学部門で大きなシェアを占めるのがプラスチック生産企業だ。化学部門の企業の82%近く、従業員数では67%がプラスチック及びゴム製造関連企業で、約72%の企業がイスタンブール、南西部のイズミル、首都アンカラ、北西部のブルサに集中している。

化学部門のうち、2016年に消費量と生産量が比較的大きく伸びると予想されているのが化学肥料だ。これまでは農家の購買力が比較的弱く、栽培面積も少ないため消費額は伸び悩み、1ヘクタール当たりの年間消費量は世界平均を約100キログラム下回っていた。しかし今年は消費量が前年の551万トンから590万トンに、生産量は367万トンから418万トンにそれぞれ大きく増えると予想されている。また輸出入も共に増加し、特に輸出は前年の24万9,000トンから55万トンと倍増する見通しだ。

化学肥料に関し最近大きな問題となっているのは、今年6月に政府が導入した一部窒素肥料の販売禁止措置だ。対象となるのは、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム及び硝酸ナトリウムで、政府はその理由としてテロ攻撃に転用される可能性を挙げる。それに対し、肥料の生産者や輸出入業者が加盟する業界団体GUIDは、同措置により関連企業の売上や輸出入が減少するとの懸念を示している。GUIDによると、年間5,500万トンの同国の化学肥料消費量のうち200万トンを硝酸アンモニウム及び硝酸カルシウム・アンモニウムが占める。

これに対し企業は対応を進めている。同国で肥料売上高4位のゲミリク・ギュブレ(Gemlik Gubre)は窒素含有量を21%に抑えた製品を開発した。また同2位のトロス・タリム(Toros Tarim)も同様に窒素含有量を抑えた製品の販売許可を申請中だ。一方カンデム・ギュブレ(Candem Gubre)は現在40%の輸出比率を70%にまで高めようとしている。

塗料の売上高も今年は増加する見通しだ。同国には340の塗料生産企業があり、2万人の雇用を抱えている。塗料に関する業界団体BOSADによると、国内での塗料の年間売上高は25億ドル。2015年の生産量は試算では900万トンから940万トンに上る。今年の売上高は11.8%減少した前年から約4%増加する見通しだ。輸出量は欧州で5番目に多いものの、昨年上半期の輸出額は7.6%減の3億1,530万ドルで前年の11.8%減に引き続き減少した。

現在政府は都市再生事業を進めており、継続的な需要が期待でき見通しは明るい。2012年に開始された政府の計画は20年間に及ぶもので総投資額は約4,000億ドル。うち650万ドルが古い家屋の解体と新しい建物の建設に充てられる予定だ。

プラスチック及びゴム加工企業は国内生産における付加価値の向上に取り組んでいる。両製品の化学産業の輸出額に占める割合は40%を上回り、今年上半期の売上高は前年比で8~9%増加した。関係企業は高付加価値製品の開発に乗り出しており、プラスチック製品製造企業が参加する業界団体PAGEVは7,000万リラ(約1,950万ユーロ)をかけてイスタンブールに研究センターを立ち上げた。またタイヤコード(タイヤ繊維)を生産するコルザ・グローバル(Kordsa Global)は、今年8月に1億リラ(2,780万ユーロ)をかけてサバンチ大学と協力して繊維複合材の研究センターを設置した。同社はまた新世代のポリエステル糸を利用したタイヤコードの需要増を受け、2,950万ドルを投じて2つの工場の施設を増強し、HMLSポリエステル糸の生産能力を拡大する意向だ。新施設の年産能力は1万2,500トンで、生産開始は2018年を予定している。

PAGEVはまたプラスチック製品のリサイクル事業を推進している。同団体によると市場規模は30億ドル。昨年同国では300万トンの包装用プラスチックごみが発生している。プラスチックごみ全体のうちリサイクルされているのは24%に過ぎず、ビジネスの潜在的な可能性は高いと見られる。

また登録自動車台数の増加と共にガソリン、ディーゼル及び自動車用ガスの消費量が伸びている。一方軽油やガスオイルの需要は減少しているが、シリアからの難民の流入が増加する同国南東部では難民向けのプロパンガスの需要が増えている。(1TRY=32.87JPY)

上部へスクロール