トルコ与党の公正発展党(AKP)がよりにもよって女性団体の圧力に屈した。11月中旬に突然発表した未成年との性行為を禁じる法案を取り下げたのだ。
字面からは女性らが反対した理由がわかりづらいが、法案の中に「今月16日以前の未成年者との性行為について、『暴力をふるったり脅迫したりすることなく、未成年者の合意の下で』行われたと認められ、その後、両者が結婚した場合には無罪とすることが可能」という内容が含まれていたのが大きな反発を生んだ。イスタンブールやアンカラで数百人が参加するデモが行われ、なんと、エルドアン大統領の娘が副代表を務める親AKPの女性団体まで法案に疑問を呈したのだ。
ボズダー法相は抗議を受けて、この条項の意図について、「地方でよくみられる年少者の結婚」を念頭に置いたと説明。「この結婚は私的(宗教的)なもので、同時に当局に届け出することはない。一方的に法律を公布すれば、慣習上の夫婦間の性行為も処罰対象になり、(服役のために)父親が不在のまま育つこともが出てくる」と話した。
しかし、反対派は「『年少者が合意』したかどうか、確かな判断基準がない」、「強姦犯が無罪になるため、被害者に結婚を迫りかねない」…など、当然と言えば当然の論拠で強く反対した。
最終的にはエルドアン大統領が廃案を命じて一段落したが、大統領の判断の背景には、AKPの支持者に女性が多いことがある。AKPは2004年に夫婦間でも強姦罪が成立するよう法律を改正するなど、女性の人権保護に一定の成果を挙げてきた。地方でもエルドアンの女性ファンは多い。国民の支持を確保する上ではここで対立をさけたほうが得策と判断したのだろう。
トルコでは、両親の同意がある場合には17歳から結婚できる。裁判所の判断で特例として16歳でも婚姻が認められることがある。トルコ統計局によれば、過去10年の児童婚は以前に比べればやや減ったものの、50万件弱に上っている。