モンテネグロ議会(定数81)は11月28日、親欧米派政党・民主社会党(DPS)のマルコビッチ氏(58)を賛成42で新首相に選出した。DPSのほか社会民主党(SD)と少数民族政党の6議員が賛成に回った。野党は「クーデター未遂疑惑」の事実関係解明を求め、議会を欠席した。1991年以来、政治権力を握ってきたジュカノビッチ元首相は、10月の選挙でDPSが過半数議席を取れなかった責任をとり、第一線から退いた。
マルコビッチ新首相は今後について、北大西洋条約機構(NATO)への加盟手続きを来年中に終えるほか、欧州連合(EU)加盟交渉を2019年までに完了すると決意を語った。このほか、◇汚職・組織犯罪対策を強化◇年3.5~4%の経済成長実現◇インフラプロジェクトの継続――などの方針を明らかにした。
閣僚の人選では「汚職疑惑と関係のないメンバーでスタートを切る」とし、嫌疑がかかっていた国防相と経済相を入れ替えた。外務相には国際的に評価の高いシンクタンク、民主主義・人権センター(Cedem)を設立した政治学者のダルマノヴィッチ氏(55)を起用した。また、EU加盟を担当する新省を設置し、ペヨビッチ加盟交渉担当官を大臣に任命した。
マルコビッチ首相はモンテネグロ国家保安庁の初代長官だった人物。2010年からはジュカノビッチ内閣で副首相兼法務相、15年からはこれに加えて内相を務めていた。政治路線的にはジュカノビッチ氏と同じ方向にあり、大きな変化はないとみられている。
親ロ・親セルビアの最大野党「民主戦線(DF)」が解明を求めている「クーデター未遂事件」は、選挙当日に警察が発表したものだ。クーデターを計画したセルビア人20人を前日夜に逮捕したとされる。DFはこれについて、「プロパガンダ以外の何物でもない」と主張。「解明まで議会を欠席する」と強硬姿勢を示している。