小さくてもキラリ~エストニア

経済協力開発機構(OECD)が3年ごとに実施している生徒の学力調査(PISA)で人口130万人の小国、エストニアが全体で3位に入る健闘ぶりをみせた。科学でシンガポール、日本に次ぐ3位、読解力で6位、数学で9位の好成績をあげた。その成功の秘密はどこにあるのだろうか。エストニア人に聞くと、こんな答えが返ってきた。

英ケンブリッジ大学で研究するマディッソーンさん(30)は、「親が子どもの成績に関心があり、きちんと勉強させている。学校は大切なものだと考えているから、子どももそう思うようになる。学校は楽しいところでなく、勉強するところ、という認識だ」と話す。

ウェールズ地方のアベリストウィス大学を卒業したレホラさん(26)は、「たいてい成績は良かったけれど、悪い点数をとったときは翌月のお小遣いがもらえなかった」と話す。宿題にかかる時間は毎日5~6時間で、エストニアにいたころは「いつも疲れていた」という。先生も真剣で、生徒の成績が落ちれば上がるまで手を尽くす。こんな学校時代の生活が「今の自分の勤労倫理を形作った」という。

エストニアのライドメツ教育次官は「子どもたち全員に適切な教育機会を与えることが、国全体の能力向上につながる」というのが基本的な考えだと話す。「金銭的に豊かでない家庭の子どもも適切にサポートすればよい成績をとれる」ため、より多くの子どもたちが高等教育を受けられるよう、大学を含めて授業料は無料、給食も無料だ。次官は「家が貧しく、1日の中で温かい食事は給食だけという子もいるかもしれないが、学校では皆平等だという意識が必要。給食費はたかが知れており、節約する意味はない」という。

教育次官は、平均的な宿題の時間が週17時間にも上り、生徒の負担が大きい事実を認めたうえで、「合唱やスポーツなど課外活動の時間も確保している」とし、「がり勉」のイメージを否定する。

エストニアは10年前のOECD評価に即して、教師の賃上げや教育の質向上に取り組んだ。今では教師の多くが修士号を持つ。

エストニアでは「教育は社会的地位向上のカギ」というのが共通認識で、実際、高学歴であれば出世は難しくない。これが社会全体のモチベーションになっている。

今後の課題は、授業言語がロシア語の学校と、エストニア語の学校との成績格差の解消だ。男女差が縮まったのに対し、この差はいまだに大きく、ロシア語の学校の学力は顕著に低いという。

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