イルクーツクで酒の代わりに入浴剤を飲んだ人が大量に死亡した事故を受けて、プーチン大統領がウオッカ税を引き下げる方針を明らかにした。節制ある飲酒で国民の寿命を伸ばそうという健康政策を実施してきたが、消費抑制策が裏目に出て中毒死が後を絶たない。経済危機で国民の台所事情が苦しくなる中、「安全なアルコール飲料」の価格を下げることが違法かつ有毒な「代用品」から国民を遠ざける有効な手段と認めた形だ。
今回の大量死では少なくとも76人が死亡した。アルコールを含む入浴剤「ボヤリシュニク」の偽造品が原因らしい。ラベルによれば、この製品はサンクトペテルブルグで製造され、最大93%がエタノールから成っている。価格は1リットル当たり160ルーブル(2.48ユーロセント)と一番安いウオッカ(380ルーブル=5.9ユーロセント)の2分の1以下。このため、代用酒として低収入層に人気があった。
中毒死した人は、エタノールの代わりに毒性の高いメタノールを含んだ偽造品を飲んだとみられ、両親を亡くした子どもも6人に上った。
ロシア内務省が年末に出した警告をみると、密造酒は酒類販売が禁止されている夜間や、インターネット、テントなどの道端で売られている。未成年者でも入手可能で、ポリタンクに入れて売られることもあるらしい。また、代用酒として化粧品、医薬品、香水、家庭用洗剤に手を出す人もいるようだ。
プーチン大統領は、ロシア人男性の寿命が64.7歳と世界183カ国中127位と短いことの理由を飲酒に見出し、2000年の就任以来、広告の禁止や課税強化、販売規制を通じて消費縮小を試みてきた。しかし、高くなっても飲みたいのが人情。安い密造酒や代用品が広まり、昨年1~9月だけでも中毒患者は3万6,000人を超えている。(1RUB=1.91JPY)