第2次世界大戦後、チェコ北部のズデーテン地方からドイツ住民が資産没収の上、追放された事実は、長期にわたってチェコとドイツの関係をきしませる要因となってきた。しかし、戦後も70年を経過し、追放が「正しくなかった」と考えるチェコ人も増えてきている。
昨年11月に実施された調査によると、追放が「正しかった」と回答した人は37%だった。正しいと考える人の割合は、年金生活者、高等教育を受けていない人、低所得者、共産党、社会民主党、ポピュリスト政党「ANO」の支持者で高い。
一方で、30歳未満の若い世代では「わからない」、「関心がない」という人が45%に上った。
過去15年間でこの問題をめぐる状況は大きく変化した。
2002年、チェコの欧州連合(EU)加盟の条件として、ドイツのキリスト教社会党(CSU)とズデーテン・ドイツ同郷人会がドイツ住民の資産をはく奪する根拠となったベネシュ布告の撤回を求めたのに対し、チェコ世論は強く反発した。当時、ベネシュ布告が「正しい」と考える人は71%にも上っていた。また、追放を「正当な処罰」だったと思う人も64%に達していた。
EU加盟後、ベネシュ布告「支持派」は減り続けていた。しかし、ヴァツラフ・クラウス大統領(当時)が2009年、欧州連合基本権憲章の批准をめぐり、「追放されたドイツ人が欧州司法裁判所に財産返還を訴える可能性」を指摘して特例適用を求めたのを機に、再び65%へ上昇した。追放自体を「正当」と考える人は49%だった。
2013年にはこの割合は40%まで低下。メディアでは次第に「ドイツ住民の処遇は不当だったが、それが引き起こした出来事(財産没収など)を元に戻すことはできない」という共通理解が形成された。
この見方は1997年1月のドイツ・チェコ共同声明の意図とも一致する。同声明では、ズデーテン・ドイツ人への資産返還や補償を外交問題化しないことが合意された。
ドイツでもこの考えが浸透している。最新の調査では「追放されたドイツ人に少なくとも部分的に補償すべき」と思う人は4%に過ぎない。ベネシュ布告の撤廃を求める人は12%だ。