兵隊さんを外注化~ロシア

数週間前、ロシア最大のSNS「VK」に「祖国のために働く男性を求む」広告が掲載された。月収は「国内勤務で5万ルーブル(700ユーロ)、国外勤務で8万ルーブル(1,150ユーロ)+各種報奨金」とロシアにしては高水準だ。それもそのはず、これは民兵募集なのだ。

ドイツの週刊紙『ツァイト』の独自取材によると、不足している戦車整備工、医師、地雷専門家、通信士は適正試験なしで即採用。その他は試験に合格しなければならないが、それほど難しくはない。採用された時点で期間6カ月以上の雇用契約を結ぶ。南東部クラスノダルに近いモルキノ基地で2カ月訓練を受ければ一人前だ。

この動きの背景には、傭兵の国外派遣の合法化がある。先月9日に改正法が発効し、「民間警備会社」による紛争・戦闘地域への人員派遣に問題がなくなった。

しかし、実際には過去にも民兵が紛争に参加した例はある。警備会社モラン・セキュリティの元社員、ディミトリ・ウトキン氏が組織した「ワーグナー部隊」はウクライナ東部とシリアで活動した。その「功績」を認められ、ウトキン氏は昨年12月、軍関係の功労者を対象とするロシア政府のレセプションに招かれた。ロシア軍の階級を持たないにもかかわらず、だ。

これらを総合すると、プーチン大統領は今後、国外の軍事行動により多くの民兵を投入する考えのようだ。すでにシリアやウクライナで介入しており、これ以上、手を広げるには人手不足だ。

ドイツ外交政策協会のロシア専門家、シュテファン・マイスター氏は、「北大西洋条約機構(NATO)が活動を縮小しつつあるアフガニスタンに民兵で構成する保安部隊を派遣する狙いでは」と推測する。同国の治安が悪化すれば中央アジアにおけるタリバンのテロが懸念され、ロシアにとっても脅威だ。

しかし、アフガニスタン戦争はロシアにとってトラウマとなっており、米国のベトナム戦争に匹敵する。さすがのロシアでも正規軍を地上戦に送り込むのは世論が許さない。しかし、民兵であれば戦死者の公式統計には現れず、ひそかに軍事行動を行えるというわけだ。

紛争地域に赴けば民兵の月給は1,700ユーロに上昇するという。それが「命の値段」なのか。(1RUB=1.96JPY)

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