トルコ自動車産業の投資活発化

トルコの自動車メーカーの今年の国内販売額は前年比10%マイナスと大きく減少する見通しだ。昨年から続く通貨リラ安と、昨年末に決定された自動車特別付加価値税の増税を背景に、今年は売上が大きく後退すると見られている。一方輸出については通貨安などから好調が続くとされ、地元自動車メーカーも同国に進出する外国メーカーも将来の成長を見越して生産能力の増強に乗り出している。

トルコ自動車工業会(OSD)によると、2016年の同国における自動車販売台数はおよそ100万台。前年から0.3%減少したものの大台は維持した。16年の販売台数減は、30%以上減らしたバスやマイナス45.1%の大幅減となったトラックなど商用車によるものだった。対照的に乗用車は前年比4.3%増で好調を維持した他、輸入車も3.4%増と健闘している。

しかしOSDとトルコ自動車販売代理店協会(ODD)によると、2017年も販売台数の減少は続く見通しだ。減少幅は前年比10%以上となると見られている。その理由の1つとされる特別消費税(SCT)は、販売額の45%から160%までの税率を自動車の排気量と価格に応じて課すもので、昨年末の改正により販売価格が4万リラ(約1万200ユーロ)を上回る車両については基本的に増税となる。

2016年の生産台数は前年比で8.9%増と大きく増加した。特に好調だったのは20%以上増やした乗用車で、全体で5.8%減となった商用車とは対照を成した。生産増は輸出にも反映し、輸出台数は前年比15%増の約114万1,400台と100万台を突破した。また自動車部品の輸出額も3.5%と順調に増加した。同国の自動車部品メーカーが加盟する業界団体TAYSADは、17年には自動車産業全体の輸出額がおよそ250億ドルまで伸びると予想する。そのうち100億ドルが部品や付属品となる見通しだ。

こうした国内の乗用車需要の伸びや活発な輸出を背景に、同国に進出する自動車メーカーは相次いで現地生産の拡充に乗り出している。

トヨタは北西部サカリヤの工場で昨年11月から新モデルの生産を開始した。新モデルは同社が初めてトルコで生産する小型スポーツ多目的車(SUV)の「C-HR」。同車はトヨタが同国で初めて生産するハイブリッド車(HV)でもある。サカリヤ工場ではこれまでカローラやベルソの組み立てを行ってきたが、新モデルの生産開始により同社のトルコにおける生産台数はこれまでの年間15万台から28万台に増加する。トヨタはそのため3億5,000万ユーロを投資し2,000人を新たに雇用してきた。同社はトルコで生産する車両の約80%を欧州諸国など海外に輸出している。

米フォードの合弁企業フォード・オトサンは2019年から北西部ゲルキュクに持つ工場でプラグインハイブリッド(PHV)モデルのSUV、「トランジット・カスタム」の生産を開始する。同社は同モデルを生産するため7億ドルを投資してきた。

伊フィアットの合弁会社トファシュ・フィアットは昨年11月、年間生産能力を現在の40万台から45万台に引き上げることを決定した。主力であるセダンの「フィアット・エーゲ」(Fiat Egea)の生産能力は20万台から25万台に増やす。そのため同社は今後5,000万ユーロを投資する方針だ。

同国で商用車を生産するメルセデス・ベンツは今年、中部のアクサライに持つ工場に研究開発センターを設置する。さらに同工場に1億1,300万ユーロを投資する計画だ。同社はトラックを生産する同工場の輸出比率を2018年までに現在の40%から50%に増やす方針を持つ。

その他、現地メーカーには欧米や東アジア以外の企業との連携も進める動きもある。昨年末には同国のオトカルが、イランのAfshan Industrial and Manufacturingと小型バス「スルタン」の組み立てを行うため完全ノックダウン(CKD)用部品を供給する3年契約を締結した。

自動車部品メーカーでは、ドイツのエルリングクリンガーが11月に熱遮断システムと密封システムを生産する工場を北西部のブルサに開設した。同社は2019年までに100万個の部品を生産する予定だ。同じくドイツの自動車部品メーカーで、15年に同国に進出したBPW ベルギッシュ・アクセンは北西部のゲブゼに工場を持ち、年間6万個の生産能力を持つ。同社は将来的な輸出も視野に入れている。

自動車用クラッチを生産するデンメツ・デブリヤは昨年末、南西部イズミルに近いケマルパシャ・バギュルヅ工業団地で新工場の建設を開始した。2,500万リラ(約640万ユーロ)を投じた新工場は2018年から操業を開始する予定だ。

昨年12月にはまた北西部ゲブゼに立地する自動車部品メーカー用工業団地TOSBに試験センターがオープンした。同センターにある認証試験場では研究開発機関とも連携して部品や装置の試験が行われる。全国に79カ所ある自動車及び自動車部品関連試験センターのうち7つはTOSB内にある。(1TRY=30.55JPY)

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