エホバの証人を「過激派」に認定~ロシア

ロシア連邦最高裁判所は4月20日、キリスト教系セクト「エホバの証人」を過激派組織と認定することを求めた法務省の申請を承認した。これにより、エホバの証人の関連施設は閉鎖、395の地域組織は解散される。また、資産は国家に没収される。宗教活動を続けた者は最高6年の懲役刑に処せられる。エホバの証人側は最高裁の判断を不服として、欧州人権裁判所への提訴を含む法的手段をとる姿勢だ。

エホバの証人は19世紀に米国で発祥した。1913年にロシアで初めて登録され、同国支部によると国内信者数は17万5,000人に上る。ソ連時代に政治的迫害を受けたが、体制転換後の1991年に名誉が回復された。

しかし、98年以降、エホバの証人を再び禁止しようとする動きが浮上。2004年のモスクワ支部閉鎖に関連し、欧州人権裁判所は10年に違法だったとする判決を下している。モスクワ支部の活動は15年に改めて合法化されたが、その後もエホバの証人への風当たりは弱まらなかった。80タイトル以上の宗教本が「過激派文書」に指定され、これを広めようとしたとして信者が起訴されたり、地域支部が閉鎖されたりした。

人権団体の「ヒューマン・ライト・ウオッチ」は今回の最高裁の判断を「信仰・集会の自由を侵害するもの」と批判。モスクワの非政府組織(NGO)で政治的急進主義の動きを調査しているSOVA研究所も「宗教的迫害以外の何物でもない」と明確なコメントを出している。

一方で、法務相代理はエホバの証人が「社会のがんである」と述べ、「他の攻撃的セクトも用心するがよい」とけん制した。ロシア社会に大きな影響力を持つロシア正教会は、エホバの証人が「国民・宗教的アイデンティティ改変を狙っている」という非難を繰り返してきた。また、ナショナリストらは発祥地が米国である事実を取り上げて「ロシア衰退を狙う米国の手先」と攻撃している。政府はこれらの勢力の意向をくみながら、自らの意に沿わない少数派を排除して権力を維持していく姿勢を崩していないようだ。

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