ウィキペディアを遮断~トルコ

今月1日にトルコでオンライン百科事典のウィキペディアへのアクセスが遮断されたことに対し、ウィキペディア財団が差し止めを請求していた問題で、アンカラの裁判所は5日、政府の措置を支持する判断を下した。これは、トルコにおける人権侵害が進行していることを示す象徴的な出来事だ。

トルコでは2014年に発効した法律により、政府が電気通信の利用状況を詳しく記録するだけでなく、電気通信当局BTKを通じて特定サイトへのアクセスを制限することができるようになった。政府がサイトの内容を「国の安全を脅かすもの」あるいは「反政府プロパガンダ」だと判断すれば執行要件が満たされるため、恣意的な運用が可能だ。

裁判所が政府の判断を妥当かどうか調べる必要がないという点で法律自体が不適切であるのは確かだ。が、昨年のクーデター未遂事件以来、エルドアン政権が裁判官の大規模な入れ替えを行い、裁判所を親政府派で固めたため、現在では法律の内容を問わず、行政のチェック機能が失われている。

先月の国民投票で、大統領権限を大幅に拡大する憲法改定が僅差で承認され、その直後にはクーデター未遂事件直後に発令された非常事態宣言がさらに3カ月延長された。非常事態下では議会が関与しない大統領令が法律と同等の効力を持つ。出版、ラジオなど、閉鎖されたメディア企業はすでに170社を超え、政府を批判すれば投獄される。米国のジャーナリスト保護委員会(CPJ)の調べによると、昨年のジャーナリスト逮捕件数でトルコは世界1位となった。

非常事態宣言が大統領および与党の恣意的な統治の具となっているのは、人気デート番組が禁止されたことにも表れている。「トルコの伝統とそぐわない」(クルトゥルムシュ副首相)という理由だ。番組の内容がどうかはともかく、デート番組の禁止が「国の安全」を保証するとはとても思えない。

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