スロバキア、産業のロボット化への対応が必要

スロバキアで産業のネットワーク化やインテリジェント化に関する議論が盛んになっている。現地に進出する外国メーカーが最新設備の導入を進める一方、政府がインテリジェント生産の課題に関する報告書を発表するなど対応が進んでいるが、専門知識を持つ労働者の不足や、インダストリー4.0等によるロボット化の進展を受けた雇用の喪失などに関する懸念の声も上がっている。

スロバキア経済は欧州諸国の中でも工業生産の割合が比較的高いことで知られ、国内総生産(GDP)のおよそ4分の1を製造業が占めている。特に自動車産業の伸びは近年著しい。同国の主要輸出産業に成長した自動車の2016年の年間生産台数は104万台。同国に進出する外国メーカーは最新設備を導入しており、生産のロボット化、自動化が進んでいる。しかし一方で経済全体を見ると、デジタル化への対応には立ち遅れが見られる。経済と社会のデジタル化の度合いを示す16年のDESIインデックスでは、同国は28カ国中21位と低迷している。同年の世界経済フォーラム(WEF)のネットワーク化指数では139カ国中47位。ドイツは15位、チェコは26位、ポーランドは42位で、50位のハンガリーを除く近隣諸国を下回っている。

こうした中、政府は昨年10月に「インテリジェント産業のコンセプト」と題する文書を発表した。そこではインテリジェント生産の導入が進む中で産業の立地拠点としての同国の地位を維持するため、最新技術の開発により産業を変革し将来に備えるとし、国際競争力を維持するための研究開発費の増額や職業訓練システムの改善などの方策が打ち出されている。欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)によれば、2015年の同国の研究開発費のGDPに占める比率は1.2%で、EU平均の2%より低いものにとどまっている。

人材面の課題としては専門家の不足が指摘されている。ユーロスタット及びスロバキア統計局によると、2015年の情報通信技術(ICT)専門家の就業者数に占める割合は2.8%とドイツとチェコの3.7%を下回るほか、EU平均3.5%よりも低い数字にとどまっている。またWEFは同国のIT専門家の養成教育に低い評価を与えている。

スロバキアでは今のところ低い労働賃金により雇用が守られているが、中東欧諸国のように組立工程の比重の大きい国ではロボットが職場を奪う可能性があると、ドイツ及び中東欧を中心に人材コンサルティング事業を行うトレンクワルダー・リクルートメントエージェンシーのマロ最高経営責任者(CEO)は指摘する。経済協力開発機構(OECD)の予想では、ロボット化の進展でスロバキアでは今後10年から20年間の間に11%の職業が失われ、35%になんらかの変化が生ずると予想されている。 

同国の非営利組織である雇用研究所のパーレニーク氏は、すべての教育制度をオートメーション化の傾向に適応させる必要があると述べる。求職サイトProfesia.skのメンシーク氏はオートメーション機器を扱う45歳以上の労働者のために生涯教育を如何に行うかを特に検討する必要性があると指摘した。

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