独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は25日、スロバキアのブラチスラバ工場の労組と、来年11月までに賃金を約14%引き上げることで合意したと発表した。これを受けて、同工場は26日、6日ぶりに操業を再開した。大幅賃上げの背景には、人手不足の深刻化に加え、政府が西欧との賃金格差縮小を支持していることがある。
VWは今月から賃金を4.7%引き上げる。また、従業員全員に一時金として500ユーロを支給する。さらに来年1月から4.7%、同11月から4.1%の賃上げを実施する。これらを合わせた賃上げ幅は14.1%に達する。賃金協定は2019年8月まで有効だ。
スロバキアでの大手企業によるストライキは、1989年に体制が変換してから初めて。ブラチスラバ工場の労組は16%の賃上げを要求し、経営側の提案(9%弱)を不服として今月20日にストを決行した。労組によると参加率は70%に上った。
ブラチスラバ工場の賃金水準は国内平均の2倍だが、VWの本国の工場を大きく下回る。労組のデータでは、平均月給(賞与込み)はブラチスラバ工場が1,800ユーロし、ドイツ工場が4,200ユーロと、2.3倍の格差がある。
スロバキアのフィツォ首相はスト前日の19日、VWのような世界的な大企業で、「スロバキア従業員の賃金を西欧の3分の1~半分に抑える理由がわからない」と発言し、労組の立場を支持した。
スロバキアの5月失業率は金融危機以来で最低の7.4%まで低下。VWとPSAプジョー・シトロエンが同国で増産を予定するほか、ジャガー・ランドローバー(JLR)も進出を決めており、人材確保はさらに難しくなりそうだ。このため、企業は賃上げで人手確保を図っている。すでにPSAと起亜自動車はそれぞれ6.3%、7.5%の賃上げを決めている。