トルコ政府が企業の研究開発(R&D)投資を後押しする政策を導入し始めた。R&D向けの国家ファンドを設立する方針を明らかにしたほか、民間企業のR&D部門の設置を促すための法改正を行うなど、同国の工業生産をハイテク分野に移行させるための動きを見せている。政府が対策に乗り出す背景には、トルコで生産される工業製品の高付加価値製品への移行が進んでいないことなどがある。
同国統計局(TUIK)によると、2015年のR&D支出は前年から17.1%増加し206億リラ(約50億6,800万ユーロ)となった。しかし国内総生産(GDP)に占める同支出の割合は1.06%と低いものにとどまっている。また、同国の付加価値向上協会(KADED)によれば、中小企業の95%はR&D活動を行っていない。
一方、外国企業の直接投資を通じたハイテク技術の国内移転も十分進んでいるわけではない。TUIKによると、工業及びサービス関連分野の外国企業のうちハイテク技術を用いているのは4.5%に過ぎない。高度技術の導入は米国、ドイツ及び台湾の企業が主導しているが、外国企業全体の23%以上が低付加価値製品の生産にとどまっている。
これらを背景に同国の工業製品輸出に占めるハイテク製品の割合は3.5%と低迷している。経済紙『デュニャ』によると2016年のハイテク製品の輸出国ランキングで同国は102位と下位に甘んじている。こうしたことから企業のR&Dに対する政府支援の必要性が指摘されてきた。
オェズリュ科学産業技術相はこのほど、技術水準を引き上げ国内産業の付加価値を高めるため、R&D技術に関する国家ファンドを設立する意向を明らかにした。基金の規模は125億リラ(30億7,500万ユーロ)で重要な国家プロジェクトに対する資金支援を行っていく予定だ。
そのほか、2016年には国家助成の対象となるR&Dセンターの開設に必要な職員の数を15人まで削減する法律が施行された。また、R&Dプロジェクトに関連する輸入については関税やその他の輸入関連税が免除されるほか、設計に関連する開発事業も助成対象に含まれるようになった。
科学産業技術省のデータからは、昨年拡大された技術開発プロジェクトの国家支援が実を結びつつあることがわかる。国家支援を受けられるR&Dセンターを持つ企業の数は年初以来大きく増えている。1-4月期には135の企業が加わりその数は計470社に達した。2008年から16年にかけての増加数は20社のみだったことを考えるとその違いは大きい。科学産業技術省は今年中に民間のR&Dセンターの数は1,000まで増加すると予想している。
そうしたR&Dセンターの3分の1はイスタンブールにあり、地理的には偏在している。イスタンブール以外では北西部のコジャエリ及びブルサ、首都アンカラ、西部のイズミルなどに多い。一方東部と南東アナトリアを中心とする地域は特に少なくなっている。
R&Dセンターを持つ企業を分野別に見ると、自動車部品メーカーが最も多い。それに次ぐのが機械メーカーとソフトウエア産業だ。また、R&D支出全体のうち50.1%が民間企業、39.7%が高等教育機関、10.2%が国によるものだった。(1TRY=31.83JPY)