欧州委がトルコの人権状況に「強い懸念」、EU加盟交渉は継続では一致

欧州連合(EU)とトルコは7月25日、ブリュッセルでトルコの人権状況やEU加盟交渉に関する閣僚級の協議を行った。EU側は昨年7月のクーデター未遂事件以降、トルコ政府が進める大規模な取り締まりで多くのジャーナリスト、司法関係者、人権活動家などが逮捕されている現状について強い懸念を表明。摘発の正当性を主張するトルコ側との議論は平行線をたどった。一方、トルコのEU加盟交渉は継続することで意見が一致した。

エルドアン政権はクーデター未遂事件をきっかけに強権統治を加速させている。これまでに逮捕者は約5万人に上り、約15万人の軍人や公務員が解雇された。さらに裁判官と検察官の4人に1人が職を追われ、政権に批判的な150以上のメディアが閉鎖に追い込まれた。

欧州委員会のハーン委員(拡大交渉担当)は会議後の会見で、トルコ政府が野党議員のほか、ジャーナリスト、作家、司法関係者、学者、人権活動家などを次々と摘発している現状に対して「非常に強い懸念を抱いている」と表明。「EU加盟交渉を進めるには人権、法の支配、民主主義、報道の自由を含む基本的自由のすべてが確保されていなければならない」と指摘し、これらすべての領域で「進展がみられることを期待する」と述べた。

トルコのチャブシオール外相はこれに対し、逮捕したのはテロ組織や過激派とつながりのあるジャーナリストらだと反論。チェリキEU担当相は移民政策におけるトルコの貢献度に触れ、「EUとトルコの間に立場の違いはあるが、当然ながら対話と協議はこれからも続いていく」と強調した。

トルコのEU加盟交渉は2005年10月にスタートしたが、EU側はトルコ国内の少数民族クルド人に対する人権抑圧などを問題視し、交渉は長く足踏み状態が続いていた。EUは昨年3月、ギリシャに密航した不法移民らをトルコに強制送還する見返りとして、EU加盟交渉を加速させることを約束。新たに経済通貨政策などの分野で協議入りした。しかし、エルドアン氏は今年4月に実施した憲法改正の是非を問う国民投票で賛成派が過半数を占めたことを受け、死刑制度の復活を示唆しており、欧州議会は今月初め、EU加盟交渉の凍結を求める決議を採択している。

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