トルコの中期経済計画、年5.5%の成長を予想

トルコ政府は先月末、2018年から20年にかけての中期経済計画を発表した。政府は国内貯蓄や民間投資の伸びを背景に、この期間の国内総生産(GDP)成長率は実質で年率5.5%に達すると予想する。そうした目標の達成には貯蓄率の上昇と民間投資の確実な増加が前提となるが、同国は政治的なリスクを抱えている上、経済的にも先行きが不透明であることから目標達成に懐疑的な見方も出ている。

2017年については政府による大型の経済対策が功を奏し、GDPの実質成長率は年率5.5%を上回る見通しだ。しかし18年以降の成長率はそれを下回ると見られている。一方アナリストの多くは、大統領選と議会選が本来の19年11月ではなく18年の後半に前倒しされる場合には、今年の年末から来年初頭にかけて政府が短期的な経済対策を実施し景気のてこ入れを図る可能性を排除していない。

一方2020年の民間設備投資の増加率は前年比プラス7%に達し、17年の4.8%増から大きく伸びる見通しだ。しかし地政学的なリスクの増大や海外における金利上昇に伴い資金が引き上げられる可能性があり、目標の達成に懐疑的な見方を示す投資家も少なくない。今年上半期の民間設備投資は実質で約10%減少したが現在のところそれが増加に転じる兆候は見られない。

また同期間における国内消費の見通しも控えめなものにとどまる。政府が予定している2018年からの大幅な増税計画もその理由の1つで、増税により内需が落ち込みインフレ率が上昇する懸念がある。

増税の内容は多岐にわたる。金融・保険業に対する法人税率の20%から22%への引き上げや、一部所得税の37%から40%の引き上げなどが予定されているほか、自動車や家賃収入に対する課税強化も実施される見通しだ。

今年初めから9月にかけて行われた特定分野に対する減税措置も打ち切られる。それに伴い家電に対する特別消費税は0%から6.7%に引き上げられるほか、8%だった家具に対する付加価値税も18%に戻る。150平方メートル以上の広さを持つ住居についても同様だ。

その他の懸念材料としては同国経済の抱える構造的な問題がある。工業部門の輸入依存度が高いことや非効率な教育システム、研究開発の不足などが指摘されており、政府が設定した目標を達成することができるかは不透明だ。政府はGDP2兆ドル、輸出額5,000億ドル、1人当たりの所得2万5,000ドルを目指しているほか、建国百周年を迎える2023年に向けて経済規模で世界10位以内に入ることを目標に置く。

国内資本の不足も大きな課題だ。トルコの経常収支の赤字幅は400億ドルと比較的大きくGDPの4%を占める。そのため大規模なインフラ整備と輸入を行うためには外国資本に大きく依存せざるを得ない。信用リスクが大きく資金の借入れコストが高いこともあり、同国では直接投資の受け入れが重要な意味を持つ。しかし直接投資を増加させるためには、経済政策の予見可能性、信頼性及び透明性を確保することが必要だ。特に法治主義の欠如は大きな課題である。

経済省によると、今年1-7月期の直接投資は前年比9.7%減の57億ドルにとどまった。この数字には前年比で31.1%増加した海外からの不動産投資28億ドルが含まれている。

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