SNS経由の機密漏れを防げ~ロシア

「ウクライナには一人のロシア兵もいない」――プーチン大統領は2015年4月のテレビ放送でこう言い切った。しかし、その時点で、すでにこれが真っ赤な嘘であることが判明していた。兵士がソーシャルネットワーク(SNS)に流した情報で、ロシア戦車隊の足取りが明らかになっていたからだ。

ウクライナ・デバルツェボの戦い(15年1~2月)でウクライナ武装勢力に加勢するため、シベリアから遠征したバト・ドンバエフ戦車兵が、ロシア版フェイスブック「Vコンタクテ」で公開した写真が手がかりとなった。子犬を抱く写真、冬景色を背に戦車の上に立つ写真――ロシア生まれの米国ジャーナリストであるサイモン・オストロフスキーさんは、ウクライナ東部に足を運び、その背景がデバルツェボであることを確かめたのだ。

このように、公開情報を組み合わせて事実をあぶりだす方法は諜報筋で「オープンソース・インテリジェンス」と呼ばれている。ロシアが正式参戦前から、シリア内戦でアサド大統領に味方して戦っていたことも、この方法で明らかになった。

ロシア政府は、こんなことが続くと具合が悪いと規制に乗り出している。今年6月には職業軍人は着任時に、ソーシャルメディアのプロフィールを上官に報告することが義務付けられた。また、近く軍人・軍属規則が改定され、任務や駐屯場所が分かるような情報を公開することが禁止される。情報機関職員に適用されていた条項を軍関係者にも広げる形だ。

国防省では、「国外勢力やテロ組織からロシアを守るため」と説明しているが、実際にはロシア軍の機密を守るためというのが本音とみられる。

ただ、さすがのロシアも職業軍人のSNS使用禁止には踏み切れないようだ。若者にとっては、どこにいても家族や友人と連絡を取り合うのが当たり前になっている。日記をつけるのも禁止されていた昔とは天地ほどの違いがある。

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