東欧におけるアフリカ豚コレラ(APF)の広がりが大きな問題になっている。人間や他の家畜には害がないが、豚が感染すると致死率が極めて高く、養豚業者は警戒感を強めている。
APFはサハラ以南のアフリカなどに常在するウイルス性疾患で、豚とイノシシが罹患する。感染経路は唾液や体液、糞、非加熱の加工肉(生ハム、サラミなど)だが、ウイルスの生存能力は高く、タイヤや車の荷台についたものが最長6カ月も生存するため、注意が必要だ。
感染すると、発熱、倦怠感、食欲減退、呼吸困難といった症状が出て、過半数が1週間以内に死亡する。予防法も治療法もなく、家畜が感染した場合、飼われているすべての豚をと殺処分にするしかない。
取れる対策は、野生のイノシシの数を減らすぐらいで、ポーランドのドゥダ大統領は、狩猟目的の有給休暇を最長6日認める政令を布告した。チェコでは警官隊が夜中のイノシシ狩りに駆り出されているという。ポーランドやチェコに国境を接し、世界養豚大国の一つであるドイツでも農業経営者の団体が「野生イノシシの数を7割減」を要求するなど、緊迫感が強まる。
今回の流行は、黒海港を持つジョージアで2007年に報告された事例に端を発する。アフリカ南東部から船舶で持ち込まれたと推測されるが、その後、ロシア、ウクライナ、バルト3国、ポーランド、チェコ、ルーマニアと感染地域が広がっている。
エストニアでは2015年の流行で豚2万2,000頭がと殺処分にされ、豚肉価格が暴落、養豚業者の3分の1が廃業に追い込まれた。自家用に豚を買っていた世帯もほとんどすべてが止めたという。
独フリードリッヒ・レフラー連邦動物衛生研究所の調べによると、2017年の報告数はリトアニア、ラトビア、ポーランド、エストニア、チェコ、ウクライナ、ルーマニアの7カ国で合わせて4,140件、このうち豚の感染が248件だった。今年は1月16日までで、すでに285件(うち豚は8件)に上っている。
一人一人ができることは少ないが、食べ残しは外に捨てない、死んだイノシシを見つけたら保健所などの衛生当局に通知する、といったことに留意するべきだろう。