スロベニア首相辞任、今年5月に前倒し議会選挙へ

スロベニアのツェラル首相は20日、国民議会(下院)に辞表を提出した。最高裁判所の14日判決で、大型鉄道プロジェクトの是非を問う国民投票のやり直しが決まったことを受けたものだ。6月10日に予定されていた議会選挙は、5月後半に前倒しで実施される見通しとなった。同国の政情に詳しい専門家は辞任の動機について、ツェラル首相が間近に迫る選挙を視野に、支持率が低迷する自党「現代中央党(SMC)」の巻き返しを狙っているのではと分析している。

裁判で問題となったのは、アドリア海に面するスロベニア唯一の海港、コペル港と内陸のディヴァーチャを結ぶ総工費約10億ユーロの鉄道敷設計画だ。全長44キロメートルの既存路線に代わり、27キロメートルの新路線を整備することで輸送時間を短縮し、競争力を向上させる目的がある。

建設費を「高すぎる」とみる国民が少なくなかったため、昨年9月に国民投票を行い、その結果、一旦は実施が決まった。しかし、反対派の市民団体が「賛成票を投じるよう呼びかける広告費を国家予算でまかなったのは不正」として投票の無効を求める裁判を起こし、14日、その主張が認められた。

ツェラル首相は判決直後、政策の柱としてきた同鉄道計画が遅延している現状について、「鉄道計画は、スロベニアの前進(positive development)に反対する者によってストップされた。私はこのような後ろ向きの勢力の力にはなりたくない」とコメントし、辞意を公にした。

ツェラル首相は2014年、設立したばかりのSMCを率いて前倒し選挙で勝利。年金者党(DeSUS)、社会民主党(SD)と中道左派連立政権を発足させた。金融危機で揺れる経済を安定に導いたが、クロアチアとの国境問題や公務員賃金闘争などを理由に、国民の支持が低下している。日刊紙『デロ』の3月調査によると、昨年11月の大統領選挙で健闘した元コメディアンのマリャン・シャレツ氏が率いる「マリャン・シャレツ・リスト」が19.2%で1位。2位は汚職で有罪判決を受けたヤンシャ前首相の率いる民主党(14.1%)、3位は社会民主党(13.4%)で、SMCの支持率は5.9%まで低下している。

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