スロバキア議会(定数150)は26日、中道左派「スメルSD」のペーテル・ペレグリニ前副首相(42)を首班とする新内閣の信任案を賛成81票、反対61票で可決した(欠席2、棄権6)。先月のジャーナリスト射殺事件を機に盛り上がった反政府運動を受けて辞任したフィツォ前内閣の後を引き継ぐ。内閣交代で内政の沈静化を図り、議会解散・前倒し選挙を避けたい狙いだ。ペレグリニ内閣下で汚職・組織犯罪対策が進むと期待する声がある一方、フィツォ前首相が引き続き議会第1党スメルSDの党首にとどまることや、新内閣の政策が前内閣と同じであることから、大きな進展はないとみる向きもある。
今回の政権危機は、マフィアと政界との癒(ゆ)着を調査していたヤン・クチアク記者とその婚約者が殺害された事件に起因する。汚職やコネ人事などに対する国民の怒りが爆発し、大規模な反政府デモに発展した。
キスカ大統領は今月9日の時点で、国民の信頼回復には「内閣大改造か前倒し選挙」しかないとの立場を明らかにしたが、フィツォ首相(当時)は拒否。退任を求める抗議行動が収まらないのをみて、15日にようやく辞任した。選挙をすれば負けるのが確実な中で次善の策を選択した格好だった。
そのフィツォ氏が後任として推薦したのが、自らの政権を支えた実務派、ペレグリニ氏だった。キスカ大統領はフィツォ氏の意向を受け入れる形でペレグリニ氏に組閣を命じたが、最初に提出された閣僚リストで、カリニャク前内相と親しいとされるヨーゼフ・ラズ氏が新内相とされたため、「これでは国民が納得しない」と承認を拒否した。
ペリグリニ氏はこれを受けて、内相人事を無所属のトマス・ドゥルッケル前保健相に変更した2つ目のリストを作成し、閣僚指名にこぎつけた。
ドゥルッケル新内相は、クチアク記者殺害事件の全容解明に加え、警察組織の大幅改革に取り組むこととなる。
前内閣退任で、前倒し選挙を求める抗議行動の規模は縮小傾向にある。しかし、このまま事態が沈静するかどうかは不透明だ。