エストニア、累進課税を導入

エストニア政府はこのほど、従来一律だった所得税率に替えて累進課税制度を導入した。所得格差を加味した公平な税制度の実現が目的だが、中所得層の負担が大きく増えることなどから国民の支持は得られていない。

エストニアは1991年の独立回復以来、税制の簡易化を進めた。所得税率は一律20%で、基礎控除こそあるものの、例外は一切ない。このため、電子税務署にログインして申告書の記載内容が正しいか確認し、送信ボタンを押せば税務申告手続きは終わる。また、未納額があるか、還付があるかもすぐにわかる。

長らく政権の座にあったリベラル派・改革党は、「シンプルかつ低税率の税制では、脱税する動機が弱くなる」として、世にもまれな超簡易税制を導入・維持した。

これに対し、1年前に政権に就いた中央党は常に「貧富の差が加味されず不平等」とし、累進課税の導入を唱えてきた。その公約を守って、税制改革を実現したのだ。

ただ、カンタル・エモル研究所の調査によると、新税制に賛成なのは国民の3分の1に過ぎない。半数は「うまく機能している簡単な税制を複雑にし、脱税の可能性を生む」として反対している。イェゴロフ財務副次官は「低所得層の税負担を軽減するため」と説明し、「新税制もわかりやすい。慣れれば反発も収まる」と楽観的だ。

低所得層の負担軽減は明らかだが、中所得層の負担はぐっと増えそうだ。国内最大紙『ポスティメース』のライマー記者(経済)によれば、国内平均の収入を得ている場合、税率はこれまでの20%から31%に増える計算となる。

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