ロシア富豪、商用車GAZへの出資比率縮小へ

ロシアの富豪オレグ・デリパスカ氏が自動車事業株を一部手放すことを検討している。同事業に対する米国の制裁解除が狙い。成功すれば、基幹のアルミ事業についても、出資比率の縮小で制裁停止を引き出す方向に動くと予想される。

ブルームバーグが3人の消息筋の話として1日に伝えたところによると、デリパスカ氏は、カナダ自動車部品大手マグナの元社長ジークフリート・ヴォルフ氏などに株を譲渡する方向で交渉中だ。同氏はデリパスカ氏の自動車事業の少数株主で、十数年来の知己にあたる。株式売却を条件として、商用車GAZ及び親会社ロシアン・マシーンズへの制裁解除を米国に求めていく姿勢という。

GAZは商用車の国内最大手でドイツのフォルクスワーゲン(VW)と合弁するほか、ダイムラー車の生産を請け負っている。しかし、今年4月、デリパスカ氏など、プーチン大統領に近い人物の保有する企業が米国の制裁対象に加わり、米国企業との取引や米ドル建て取引の停止を迫られることとなった。

米国による経済制裁の適用や執行を担当する財務省外国資産管理局(OFAC)は先月22日、やはりGAZと提携する米ディーゼルエンジン大手カミンズに対し、GAZとの取引を中止する期限を今月5日から10月23日に延長した。その際、デリパスカ氏が経営権を手放せば制裁解除を検討する方針を示した。

GAZは自動車・エンジニアリンググループであるロシアン・マシーンズの子会社で、デリパスカ氏が間接出資を含め80%の株式を握る。売却先候補のヴォルフ氏は現在、GAZの社長や、ロシアン・マシーンズの監査役会長を務めている。

やはりデリパスカ氏が保有し、米国制裁の対象となっているアルミ世界2位のルサールは、国外取引を事業の中心とするため、賃金支払いに支障をきたすほどの影響を受けている。OFACは同社についても、直接の株主である複合企業En+に対するデリパスカ氏の出資比率を66%から40%台半ばまで減らせば制裁解除交渉に応じる姿勢を明らかにしている。

このため、GAZへの出資縮小が解除につながれば、ルサールについても同じ手法で制裁対象からの除外を求めていくとみられている。

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