超高速の次世代交通システム「ハイパーループ」の実用化を目指す米ハイパーループ・トランスポーテンション・テクノロジーズ(HTT)は14日、ウクライナ社会基盤省と提携合意した。同システムの商業利用実現に共同で取り組む内容で、社会基盤省では5年以内の開通を見込んでいる。
合意によると、HTTは同省と直接提携し、ハイパーループシステムを段階的に整備する。まずは、全長10キロメートルの試験コースで型式認定基準を含む法的枠組みを整備する。フランスにある既存コースを利用するか、ウクライナにコースを新設するかは、予備調査を踏まえて年内に決定する。試験は来年に実施する。
実用化は官民提携(PPP)方式で行い、あくまでも商業プロジェクトとしての成功を狙う。
オメリャン社会基盤相によると、キエフかドニプロにHTTと共同で研究開発センターを設置することも計画されている。ハイパーループに限らない新しい運輸システムの材料・部品開発が目的だ。
ウクライナ政府は、ハイパーループ整備を運輸戦略「ウクライナ2030」の一環として位置付けている。将来的にはアジアと欧州を構成するハイパールート幹線を実現し、中国の主導する広域経済圏構想「一帯一路」で重要な役割を担う狙いだ。
ハイパーループは、真空近くまで気圧を減らしたチューブ内で磁気を推進力に旅客カプセルを運行するシステム。テスラ・モーターズの社長として知られるイーロン・マスク氏の発案で、複数のベンチャー企業が事業化に取り組んでいる。
空気抵抗が少ないことからカプセルを動かすためのエネルギーが小さくて済み、最高時速1,200キロメートルで走行が可能という。
HTTは東欧で、ウクライナのほかにスロバキア、チェコと合意を結んでいる。(東欧経済ニュース2016年3月23日号「スロバキア政府、「ハイパーループ」の事業化調査で合意」を参照)