国際結婚はただでも手間がかかるものだが、舞台がロシアとなると事はやっかいだ。モスクワに住むロシア人記者が西欧出身の彼女と国際結婚の手続きに挑戦した様子をレポートした。
記者のパベルさんとその婚約者は、現住所のモスクワではなくパベルさんの出身地であるサンクト・ペテルブルクで役所婚をしようと決めた。せかせかした大都市であるモスクワは「我が家」という感じがしないからだ。
まずは国際結婚に必要な書類をチェックする。外国人である彼女の場合、独身を証明する書類と旅券、そしてそれぞれのロシア語訳と、正式書類であることを証明する認証をつけなければならない。パベルさん自身は簡単だ。ロシアの旅券はロシア語だし、「独身」である旨も記入がある。
時代はデジタル。公的サービスアプリ「ゴススルジ」で役所婚の日にちを予約できる…と思いきや、これが可能なのはロシア人同士だけ。それ以外の場合は役所へ、それも結婚したい土地の役所へ赴かなければならない。電話でいろいろ質問しようとしたところ、「とにかく来てください。そのほかのことは電話では話せません」と言われた。
仕方がないので、ある金曜日にサンクト・ペテルブルクへ向かった。同市で唯一、外国人が式を挙げられるお役所は、19世紀に建てられたネヴァ川に面するお屋敷の中にある。大変エレガントなお役所には結婚を望む人々の列。番号札もないから、とにかく待つしかない。
30分が経ち、待ちきれなくなった婚約者はパベルさんを置いて様子を見に行き、地下で役人を口説いて書類の確認をしてもらった。すると彼女の独身証明書に問題があることが分かった。公証人の証印が原本ではなくてロシア語訳の方についているという。「日曜にはモスクワへ帰らなければならない」と焦る二人に役人は「蜂起通り6番地の翻訳事務所へ行ってらっしゃい。間に合うかもしれない」と教えてくれた。
婚約者を待たせて、パベルさんは教わった翻訳事務所へ向かう。地下鉄を乗り間違えたりしながら最寄り駅に着いたものの、表へ出たとたんに翻訳事務所の看板の山。いい加減な仕事をする半分詐欺師のような業者がいっぱいあるのだ。目指す事務所を探すのにも苦労する。
無事に見つけて「エクスプレス翻訳サービス」を申し込んだ。受け取りは翌日の土曜日。お役所は…なんと開いている。こういうわけで、幸運にも二人は夏に結婚できることとなったという。