中央アジアからの出稼ぎ先といえばロシアが定番だったが、ここにきて韓国の人気が上昇している。ロシアよりも賃金が高く、治安も良いというのが理由だ。
韓国に来る中央アジア人には3つのタイプがある。まずは朝鮮民族系の人々(高麗人=コリョ・サラム)で、2004年から韓国での居住・労働が認められるようになった。2つ目は韓国が相互協定を結ぶウズベキスタンとキルギスの国民。労働ビザを取得し、合法的に就労できる。3つ目は査証なし入国ができるカザフスタンの国民だ。
コリョ・サラムは常に合法的に労働・滞在できるため、比較的労働条件が良いが、それでも「ラミネート製床材工場で1日12~14時間、週6日労働」など決して楽ではない。ただ、顔立ちのせいで差別される母国より暮らしやすく、永住を考える人も多い。
不法就労しているカザフスタン人女性は、真夏の洗濯屋で1日16時間働いた。韓国では襟ぐり・肩の開いた服が着られないため、「タートルネックで仕事した」という。その後、田舎の喫茶店で働いたときは、住み込み(家賃・食事無料)で12時間労働、月4日休み、月給160万ウォン(約1,350ドル)だった。友達もなく退屈な生活が我慢できなくなって辞め、仕事を転々としているが、常に不法滞在で捕まるのではないかとひやひやしながら暮らしている。取り締まりがある公共交通機関は利用せず、移動には白タクを使っている。
出稼ぎが増えたことで中央アジアの人たちが集まる「ロシア人街」が多く存在するようになった。ソウルから1時間ほどのところにある安山(アンサン)や、韓国第6の都市・光州(クアンジュ)の月谷洞(ウォルゴクトン)などがそれで、キリル語の看板が並ぶ様子もみられるという。「知る人ぞ知る」で、右も左もわからずに韓国に着いたカザフスタン人が空港で「ロシア人らしい人」に尋ねたら「アンサンにいってみたら」と勧められたという。
さて、コリョ・サラムは独立国家共同体(CIS)に住む朝鮮系の人々のことだ。18世紀末から19世紀初めにロシアの沿海州に移住した朝鮮人を祖先に持つ。1937年に「日本のスパイを働いている」と疑われ、スターリンによって中央アジアに強制移住させられたために同地に住んでいる。2010年頃の中央アジアには約30万人のコリョ・サラムが住んでいたという。