バルト海の主要な漁業資源が枯渇し、今後漁業を継続することが困難になってきている。世界自然保護基金(WWF)など4つの非政府組織(NGO)が先ごろ発表した報告書によると、バルト海ではタラなどの生息数が大幅に減少して生産力の低下が見られており、漁業を持続可能なものとするため2020年までに西バルト海におけるニシン、及び東バルト海のタラを禁漁にし、欧州法に従って乱獲をやめるよう求めている。また同報告書は欧州委員会と各国の漁業所管省庁に対し、漁獲規制を国際海洋開発理事会(ICES)の科学的勧告に従ったものとするよう要請している。
欧州連合(EU)の共通漁業政策(CFP)は、2020年までに域内の漁獲資源の回復と「持続可能な水準」の漁獲量を達成するよう求めている。ICESがこのほど発表した科学的勧告では、バルト海全域のタラ、西バルト海のニシンの漁獲資源が危機的な状況にあると明確に指摘されている。ICESはCFPの目標を達成するには、東バルト海のタラと西バルト海のサバの漁獲量を2020年にゼロとする必要があるとし、漁獲資源を守り将来的に持続可能な漁業を達成するよう勧告している。
■NGO「漁獲制限の厳格な実施を」
今回の報告書を作成した各NGOはいずれも漁獲制限の厳格な実施を求めている。WWFでバルト海地域を担当するトレソン氏は、漁業資源の枯渇は乱獲に加え、欧州委員会や沿岸諸国により科学的な勧告が無視されてきたことに原因があると述べた。クリーンバルティック同盟(Coalition
Clean
Baltic)の漁業担当者ヘグルンド氏は、東バルト海のタラの減少を食い止める唯一の方法は、すべての漁業を即時中断し資源回復のための計画を練ることだと話した。海洋保護団体OCEANAの政策顧問のビアラーシュ氏は、欧州委が科学的勧告に合致した漁獲制限を実施することが重要だとしている。Our
Fishのプログラム担当者のフバルド氏は、2013年にCFPが改定されたにも関わらず、政府は短期的な視点しか持たない漁業関係者の圧力に屈しており状況は悪化していると述べた。
CFPは2020年までに例外なく全ての漁業資源の利用を持続可能なものとするよう求めている。しかし過去2年間、欧州委はカレイの一種であるプレインについて漁獲資源の回復につながる漁獲量を上回る水準を要求している。