欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は22日、フランクフルトで講演し、米中貿易摩擦の影響などで世界経済の先行き不透明感が高まる中、ユーロ圏全体での財政拡大が不可欠との認識を示した。ECBの金融政策に関しては、大規模な緩和策の効果を評価する一方、引き続き「副作用」を注意深く監視すると述べ、近く戦略的な見直しに着手する考えを表明した。
11月1日の総裁就任後、ラガルド氏がECBの政策に関して対外的に発言したのは初めて。同氏は世界的な貿易摩擦や技術革新による構造変化などにより、ドイツを筆頭にこれまでのような貿易の高い伸びは期待できなくなったと指摘。今後は輸出に頼らず各国が自力で成長できるよう、デジタル化への対応や環境政策など「未来に向けた投資」を拡大するよう訴えた。
ECBの金融政策に関しては、現在の緩和策がユーロ圏の景気回復に向けて「内需の主な牽引役」として機能しており、依然として有効と評価。そのうえで、マイナス金利の拡大や量的緩和の再開など大規模な緩和策をめぐり、ECB内でも反対意見があることを踏まえ、近く戦略的な再評価を行う考えを示した。ラガルド氏は緩和策の副作用をチェックしながら、必要な流動性を供給する方針を示し、「ECBは引き続きユーロ圏経済を支援し、物価安定化の責務を堅持しながら将来のリスクに対応する」と述べた。