反独感情で着任拒否~駐ポ―ランドのドイツ大使

在ワルシャワ・ドイツ大使の席が7月初め以来、空席となっている。というのは、新大使の就任に必要なポーランド外務省のアグレマン(任命同意)が得られていないためだ。外務省側は「アグレマンをめぐる判断の根拠を説明する義務はない」として理由さえ明らかにしていない。

ポーランドの左派リベラル系日刊紙『ガゼタ・ヴィボルチャ』のヴィエリンスキ副編集長は「『玄関口で人を長く待たせて』貶めるのは外交手段として非常に不快な方法」と政府を批判する。与党・「法と正義(PiS)」が昨年の選挙戦を「反ドイツ感情」で戦った延長戦にあり、新大使に予定されているアルント・フライタークフォンローリングホーフェン氏(62)の父親が、第二次世界大戦末期にグデリアン参謀総長の副官として、参謀本部会議に出席していた事実を政府寄りメディアがこぞって報道している。また、フライタークフォンローリングホーフェン氏自身がドイツ連邦情報局(BND)の副局長、北大西洋条約機構(NATO)事務総局の文民情報保安次長を務めたこともPiSには気に入らないようだ。(ちなみに氏の父親は1948年、戦争犯罪を犯した証拠が見つからずに釈放され、のちに設立されたドイツ連邦軍に入隊して73年に除隊した。)

PiS政権は都合の悪い報道を行ったドイツ系メディアを目の敵にしており、このままでいくと新大使の就任がさらに遅れる可能性もある。

ポーランドは第二次大戦で甚大な被害を受けたが、その史実は外国であまり知られていない。その不満もあってか、PiS政権はここ数年、ドイツに戦争賠償を要求する可能性さえちらつかせている。着任の時期はともかく、新大使の仕事が容易ではないことは確かだ。

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