救世主に御用!~ロシア

西シベリアはクラスノヤルスク地方で、「キリストの生まれ変わり」を主張するセクトの教祖「ヴィサリオン(本名:セルゲイ・トーロップ)」が逮捕された。「違法な宗教団体を運営して信者から金を巻き上げ、精神的に虐待した」疑いがもたれているためだが、ヘリコプターや重装部隊を投入しての捕り物劇に違和感が広がっている。

逮捕された教祖は1989年に交通警察官の職を失った。ソ連崩壊が始まったころに「覚醒」体験をし、91年に宗教団体「最後の聖書(The Last Testament)」を設立したという。ロシア・メディアによると、当初「イエスが地球に近い軌道から人々を見守っている。マリアは『ロシアを駆け回っている』と主張」していたが、のちに自らが「イエスである」と宣言した。

クラスノヤルスク地方南部の田舎に共同体「サン・シティ」を作り、数千人の信者とともに暮らす。信者の中には様々な分野の専門家もいれば、国外からわざわざ巡礼にやってきた者もいる。

「ヴィサリオン」の教えは、正教会の儀式をベースに、動物性食品の拒否、共同体内における金銭のやり取り禁止、衣服の簡素化といった独自の規則を盛り込んでいる。「ヴィサリオン」の生まれた1961年を起点に年を数え、「ヴィサリオン」の誕生日である1月14日にクリスマスを祝う。

教祖のほかに幹部2人も逮捕されており、信者がこの後、どうなるのかはまだわからない。また、ロシア正教会の苦情にもかかわらず、長いこと「ヴィサリオン」を黙認していた当局が、なぜ今になって逮捕に動いたかも不明だ。現地メディアの中には、「サン・シティ共同体」が「地元ビジネスの利権を阻害する存在になったためでは」と憶測する報道もある。

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