エストニア号沈没原因に新説

欧州船舶の平時の海難事故としてタイタニック号に次ぐ犠牲者を出した1994年のエストニア号沈没事故。その原因について、新たな説が浮上している。先月末に配信が始まったドキュメンタリー番組が報じたもので、調査の責任を負うエストニア、フィンランド、スウェーデンの当局は新事実を共同で調査する方針だ。

事故原因について1997年に発表された公式調査結果は、荒天下の波でエストニア号の車両昇降口の扉部品が外れて扉が開き、海水が流入して沈没したと結論付けた。しかし、ドキュメンタリー番組の取材で、生き残った乗客の証言に、調査結果と矛盾する部分があることが判明した。このため、取材チームは無人潜水艇で深さ80メートルの海底に沈むエストニア号の外観を撮影。右舷に長さ4メートル、幅1.2メートルの穴が開いているのを発見した。

番組に登場したノルウェーの海事専門家は穴の形状から、時速3~10キロで動いていた質量1,000~5,000トンの非常に重い物体と接触したと推測する。これは、「最初に船全体で感じるような衝撃があった」、「エストニア号のすぐ横の水中に大きな白い物体をみた」という乗客の証言と合致する。

公式調査結果については、証人の聞き取り調査が不十分だったことなどで以前から疑問の声があり、沈没を生き延びた乗客や遺族がたびたび徹底的な再調査を求めてきた。上述の証言も検証作業がなされず、船体に穴が開いていたことが今回、ようやく明らかになった。調査を行った当局への信頼が改めて揺らいでいる。

クルーズフェリーのエストニア号は1994年9月28日、タリンからストックホルムに向けてバルト海を航行中、フィンランド領海で沈没した。深夜の事故であったことや、わずか1時間で沈んでしまったことで多くの乗客が逃げ遅れ、852人が死亡した。生き残った人は137人に過ぎなかった。

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