禁酒月間の参加者増える~チェコ

チェコの非政府機関(NGO)「リーグ・オブ・オープン・メン」が9年前に始めた「スヘイ・ウノル(ドライ・フェブラリー)」への参加が広まっている。2月の1カ月間だけ禁酒するもので、参加者は初年度の100人から昨年には約60万人(成人人口の1割)に増加した。キャンペーンの目的は、一人一人が自分の飲酒習慣を見直すきっかけを作り、社会全体のアルコール依存症に対する意識を高めることにある。

人気歌手のペトル・ハラジムさんの例は、キャンペーンの狙いが当たったケースと言える。一昨年、禁酒月間に参加した後、4月にアルコール依存症であることを公表し、コンサートを中止した。ファンを中心に、社会に波紋が広がった。

ハラジムさんは禁酒月間中、一滴も飲まなかったが、3月になったとたんにまた飲み始めた。何日も飲み続けたこともあった。それで自分が依存していることに気づいたという。それまでは、「ずっと二日酔い状態だったけれど、まだ大丈夫だと思っていた。川に落ちたり、テーブルで酔いつぶれたり、冬のベランダや道端で寝てしまったり、煙草に火をつけたままベッドに入ったりしても『自制できる』と思っていた」と話す。これを機に3カ月の入院治療を受けた。

主催するNGOは、「チェコの依存症患者は約100万人と考えられている。参加者が増えれば増えるほど、『自分が酒を飲んでいるのか、酒に呑まれているのか』考える人が多くなる」と話す。

チェコのビール年間消費量は1人当たり146リットル。「ビールの国」と言われるだけあって世界で最も多い。「のどの渇きをいやすため」に飲む人も多い。ワインや蒸留酒などを含めたアルコール消費量(純アルコール換算)は14.4リットルと、世界保健機関(WHO)によると、モルドバ、リトアニアに次いで世界3位だ。

一方、専門家の中には「新型コロナの流行で『チェコ人は酒呑み』というイメージが正しくないことがわかった」と話す人もいる。投資会社BHセキュリティーズのシュテパーン・クレチェクさんによれば、昨年は外国からの訪問客が激減するなか、チェコのビール醸造所の売上高が15~20%、ワイン・蒸留酒メーカーは30~40%、それぞれ縮小したとみられている。「北欧からの訪問者を中心に、飲酒目的の旅行者は多い。また、外国から働きに来る50万人の季節労働者が飲む分も無視できない」という。チェコ酒造・輸入業者連盟のヴラディミル・ダレブニークさんは、「チェコに近いドイツ、オーストリアの国境地帯に住む人がチェコに酒を買いに来る(分が統計に入っている)」という。

しかし、多くの専門家は「チェコの飲酒統計に占める外国人の割合を正確に割り出すのは難しい」として、このような意見に対して慎重な姿勢だ。というのも、「酒が過ぎる」人が多いのは事実だからだ。チェコでは飲酒が原因で病気になる人が7人に1人いると推定されている。医療費、欠勤、事故、裁判費用など、経済に与える影響は年間560億コルナ(22億ユーロ)と、国内総生産(GDP)の1%強に上る。外国人云々はともかく、飲みすぎは健康によくない。自ら気づいて正すことができればそれ以上のことはなく、NGOの取り組みが有意義なのは確かなようだ。(1CZK=4.91JPY)

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