ロシアでアイリッシュ・ウイスキーが売れている。最新の2019年の統計データによると、同国での販売量は730万本と、10年比で231%増の急拡大を示した。英国、フランス、南アフリカ、そして本国アイルランドを抜いて、今では国別消費量で米国に次ぐ2位につけている。「ジェムソン」、「ブッシュミルズ」、「キルベガン」、「ティーリング」といったスタンダードな銘柄のほか、手ごろな価格の「プロパー・ナンバー・トゥエルヴ」なども人気だ。
アイルランドのグレート・ノーザン醸造所のオーナーであるジョン・ティーリング氏は、「昨年もロシア市場は成長した。欧米での売れ行きがいまいちだったのとは対照的だ。アイリッシュ・ウイスキーはロシア人の好みに合っているようで、再注文のほか、新規の注文も入っている。輸入品で周囲との差をつけたい中産層の需要もあるだろう」と話す。
人気を裏付けるように偽物も流通するようになった。アイリッシュ・ウイスキー協会(IWA)は昨年、ベラルーシなどで作られた「アイリッシュ風ウイスキー」6ブランドを発見し、ロシアの店舗に撤去を求めた。また、欧州連合(EU)に対し、知的財産権と原産地規則(GI)に関する交渉をロシア政府と行うよう働きかけた。ただし、偽物で味を占めた消費者が本物を購入するようになることもあり、必ずしも悪い結果とはなっていないようだ。
アイリッシュ・ウイスキーの人気が伸びているのはロシアだけではない。中東欧、そして中央アジアでも売れている。本来、酒を飲んではいけないはずのイスラム教国、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタンにもカザフ系アルメニア人の貿易会社を通じて輸出されている。