●全長45キロメートルの新運河、総工費は推定650億米ドル
●建設理由の「ボスポラス海峡の交通過密化」には疑問符
トルコのエルドアン大統領は26日、巨大プロジェクト「イスタンブール運河」の着工を宣言した。ボスポラス海峡と平行する形で、イスタンブールの欧州側に全長45キロメートルの運河を整備するもので、ボスポラス海峡通航数の「劇的な増加に対応するため」と説明している。総工費は推定650億米ドル。野党やイスタンブール市民の多くは、環境汚染を理由に強く反対している。
エルドアン大統領は定礎式で、「ボスポラス海峡を通過する船舶が現行の4万5,000隻から2050年には7万8,000隻に増加する」との予測に立ち、新運河が「海難事故を防ぎ、市民の安全を守るのに役立つ」と説明した。ただ、トルコ沿岸警備隊によると、船舶の大型化を受けて通航数は数年前から減少傾向にある。また、監視体制の進歩で大きな衝突事故は現在ではまれになったという。トルコの政治に詳しい専門家は、景気が減速する中で与党・公正発展党(AKP)を支持する実業家の利益を確保するのが真の動機とみる。
市民の多くは、「イスタンブールに残る唯一の自然地帯」に運河を建設すること、建設予定地に飲料水の水源の多くが存在することなどを理由として、プロジェクトに反対している。環境専門家は、運河が実現すれば黒海とマルマラ海の微妙な生態系バランスが崩れ、マルマラ海に住む生物のほとんどが死滅する危険を指摘している。国内大手銀行も環境に害があることを理由に、軒並み融資に応じない姿勢だ。