ロシア人はプログラミングに強い。国際情報オリンピック(IOI)では常に好成績、世界中のIT企業で活躍、「テトリス」から「カット・ザ・ロープ」、「テレグラム」に至るまでの人気ゲーム・アプリを開発――と、例を挙げればきりがない。どうしてこうも強いのか。その秘密はソ連時代の教育体制に起源を持つ。ソ連では、応用数学やプログラミングに重点を置いていた。というのも、冷戦における核兵器競争で米国(西側陣営)を追い越すのが国是だったからだ。優秀な工学士の基礎は数学力、ということで、全国で数学オリンピックが開催された。中高生向けのIOI定期開催にも尽力した。
オリンピックでは制限時間中に課題を解くためのプログラムを書く。これには様々な要素の中から何が本質的なのかを見抜き、論理的に組立てていかなければならない。オリンピック(コンクール)の形態をとることでスポーツと同じように競争心がくすぐられ、青少年のやる気も起きる。
学校における高度な数学教育も大きな力となった。大都市には数学・物理に重点を置いた特別学校が設けられた。また、子ども向けの専門雑誌やクラブもあった。
「カット・ザ・ロープ」を開発したゼプト・ラブの創業者、双子のヴォイノフ兄弟は8歳でプログラミングを始めた。というのも、買ってもらったコンピューターで遊べるゲームはあまりなく、自分で作るしかなかったからだ。
熱心な先生もいて、コンピューターの授業の時間にヴォイノフ兄弟をクラスから連れ出し、自らのコンピューターでゲームを作らせてくれたという。
1990年代の混乱で多くの企業・調査機関が閉鎖されるなか、IT市場は世界的に成長。その中で◇古いシステムの維持が不要◇海賊版ソフトを無料で利用◇人件費の安さ――という好条件が重なり、ロシア人が活躍する舞台が開けた。
ロシアでは高レベルな大学教育が維持され、卒業生も多くが国内で仕事をしている。これにより、ノウハウが次の世代に受け継がれる下地がある。
プログラマーの賃金は、業界のグローバル化や遠隔勤務が可能なことから地元の給与動向とは関係なしに年々上昇。現在では、給料も魅力となっている。