ハンガリー政府は欧州連合(EU)で未承認の中国・ロシア製ワクチンを早くから導入し、新型コロナワクチン不足への迅速な対応をアピールしてきた。ロックダウン措置の解除やマスク着用義務の廃止など、早くから国民の生活を「通常モード」に戻せたのは予防接種を早期に始めたためと言ってよい。しかし、現在では接種率で他のEU諸国との差が縮まり、未承認ワクチンを打ったことによる欠点が目立つようになってきた。
19日現在で接種が完了した人の割合はハンガリーが55%と、EU平均の43.8%よりもまだ高い。問題は、中国・シノファーム製ワクチンでは接種が完了したのに十分な抗体が確認できない人がいることだ。このため、政府も来月から3回目としてファイザーやモデルナの開発したmRNAワクチンの追加接種を始めることにしている。
一方、集団免疫の確保に必要とされる80~85%の接種率に届くかどうかという問題もある。というのも、アンケートによると注射を受ける意思のある人は国民の60%に過ぎないからだ。政府はこのため、「自己責任」による接種を呼びかけようと「予防接種は命を救う」をスローガンにキャンペーンを実施中。また、家庭医が60歳以上の患者一人一人に電話をかけて接種を薦めることになっている。
夏のバカンス期を迎えて不満の種になりそうなのが、EUのデジタル予防接種証明書だ。これを持っている人は基本的にEU内を自由に移動できる。しかし、交付されるのはEUが承認したワクチンを打った人のみ。未承認ワクチンの接種者についてはEU加盟各国が入国規則を設けることができることになった。例えばドイツは、スプートニクVかシノファームの接種者には陰性証明書の提示を求めている。