ガスプロムが天然ガスの対欧供給拡大へ、プーチン大統領が指示

●これまでは「契約量以上を供給中で、増量は難しい」と回答

●供給拡大はノルド・ストリーム2稼働を巡る駆け引きか

プーチン大統領は10月27日、ガスプロムのアレクセイ・ミレル社長に対し、国内備蓄が完了次第、ドイツ・オーストリア向けの天然ガス輸送量を増やすよう指示した。供給量が増えるのは今月9日以降となる見通しだ。

欧州天然ガス価格の指標となる蘭TTFが年初の4.5倍強に上昇するなど、欧州・アジアのガス相場は急騰している。備蓄不足やコロナ危機後の景気回復による需要拡大などがその背景にある。

欧州の供給拡大要請に対してプーチン大統領はこれまで、「契約で定められた量以上に供給しており、さらなる増量は難しい」と回答していた。一方、ロシアとドイツを直接結ぶバルト海天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」の早期稼働に向け、ドイツ政府にたびたび営業許可付与を求めていた。このため、ロシアが天然ガスを盾に、欧州連合(EU)のノルド・ストリーム2反対勢力へ揺さ振りをかけているという批判が強まっていた。

ノルド・ストリーム2は9月初めに完工したが、営業許可が下りず、未稼働のままだ。ドイツ当局は年末までに許可するかどうかを判断することになっている。

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