EUでコロナ規制強化広がる、未接種者の行動制限も

●ロックダウンの回避を優先し、制限や義務を強化

●やむを得ずオーストリアとスロバキアはロックダウンを実施

新型コロナウイルスの感染再拡大が続く欧州連合(EU)で、社会・経済活動を制限する動きが加速してきた。イタリア政府は11月24日、ワクチン未接種者の行動を厳しく制限すると発表。スロバキア政府は同日、隣国オーストリアに続いてロックダウン(都市封鎖)を再実施することを決めた。

イタリアではワクチン接種者や48時間以内に受けたPCR検査または抗原検査で陰性が判明した人、過去6カ月以内に新型コロナ感染症から回復した人に「グリーンパス」と呼ばれる証明書を発行し、取得者が自由に行動できるようにしている。これまで未接種者もPCR検査で陰性であれば取得できたが、12月6日から来年1月15日にかけて対象外とし、飲食店、映画館など娯楽施設、スポーツイベントへの立ち入りを禁止する。

イタリアでは12歳以上のワクチン接種率が84%と高く、1日当たりの新規感染者は1万人程度と、他のEU諸国と比べて感染拡大は深刻ではない。それでも、政府は本格的な冬に入って感染者や死者が急増し、再びロックダウンを実施せざるを得ない状況に追い込まれるのを防ぐため、未接種者の行動制限に踏み切った。EUでは同様の制限措置をドイツが先行して導入している。

さらに伊政府は、ワクチン接種を義務付ける対象を12月15日から拡大することも決めた。これまでは医療従事者、学校の教員だけだったが、軍、警察、学校の全教職員も義務化する。

スロバキアでは25日から2週間のロックダウンが実施され、不要不急の外出、飲食店や店舗(スーパーなど生活必需品を扱う店は除く)の営業が禁止となる。

同国のワクチン接種率は50%を下回り、EUで下から3番目の水準だ。このため感染者が急増しており、24日には1日当たりの新規感染者が初めて1万人を超えた。医療体制もひっ迫していることから、政府はロックダウンに踏み切った。

このほか、EUではチェコ政府が25日に非常事態を宣言。ロックダウンは避けるものの、バーやナイトクラブの深夜営業、クリスマス市開催の禁止を含む規制策を導入すると発表した。26日にはオランダ、ベルギーなどが飲食店などを対象とする営業規制を発表した。

フランス政府もロックダウンには慎重だが、25日に感染対策の強化を発表した。26日から映画館、劇場などでマスク着用が義務付けられる。また、新型コロナワクチンの追加接種の対象を18歳以上の全成人に広げる。ワクチン接種を証明する「衛生パス」について、接種完了から7カ月以内に追加接種しない成人は22年1月15日から無効とし、飲食店や長距離列車などを利用できないようにする方針も打ち出した。衛生パスはPCR検査で陰性の人も取得できるが、検査結果の有効期間を24時間に短縮する。