ルーマニアの首都、ブカレストを象徴するインターコンチネンタル・ホテルが元旦から名称を「グランドホテル・ブカレスト」に変更する。同ホテルの運営会社と、インターコンチ・ブランドを保有するIHGホテル・アンド・リゾートとの契約が満了するためだ。推定予算2,100万ユーロ、期間3年の大規模な近代化工事も予定されている。工事中も営業は続けるが、改築が完了すれば内装も変わり、過去に別れを告げて本格的に新たなスタートを切ることになる。
ブカレスト・インターコンチの歴史は1960年代に始まる。社会主義諸国で多くのホテルを建設したことで知られるサイラス・イートン・ジュニアが手がけたが、そのきっかけとされる逸話が残っている。ブカレストを訪れた際、高級ホテルがなくて思ったような宿が見つからず、「あるホテルのロビーで寝た」というのがそれだ。
真偽はともかく、インターコンチは1968年に着工した。設計を担当した建築家の1人であるロメオ・ベリャさんは開館40周年の際、「インターコンチ・グループがルーマニアにホテルを建てられたのは、60年代の政治情勢があってのこと」と振り返った。当時のルーマニアは68年、プラハの春の鎮圧に向けた派兵を断ったことが西欧諸国の高い評価を受け、チャウシェスク統治下で自由化が試みられた時期にあった。
インターコンチは71年に開館。22階建てで、高さ86メートルはその後30年間、「ブカレストで最も高い建物」の座を保持したという。