自動車排ガス試験の新規制、欧州議会環境委が「移行措置」に反対

欧州議会環境委員会は12月14日、域内で販売される自動車の排ガス試験を厳格化して新たに実走行試験を実施する一方、移行措置として一時的に窒素酸化物(NOx)の排出基準を緩和する規制案に反対する決議を賛成多数で採択した。決議は1月下旬の欧州議会本会議で採決が行われる見通し。仮に本会議で採択された場合、欧州委員会は規制案を見直す必要に迫られ、新たな検査体制の導入が遅れる可能性がある。

独フォルクスワーゲン(VW)が排ガス規制逃れのため一部のディーゼルエンジン車に違法ソフトを搭載していた問題を受け、欧州連合(EU)加盟国の代表で構成する自動車技術委員会は10月、2017年9月から室内での試験に加えて新たに「実走行排ガス試験(RED)」を導入することを決めた。第1段階として新たに型式認証を受けるすべての新型車にRED規制が適用され、2年後から域内で販売される既存モデルの新車も対象となる。

ただ、路上走行時におけるディーゼル車のNOx排出量は現行規制の排出上限(走行1キロメートルあたり0.08グラム)の平均5倍に上るとされ、あらゆる環境や条件下で室内試験と同じ規制値を満たすことは技術的に困難。このためNOxの排出上限を一時的に引き上げ、新型車は17年9月(既存モデルの新車は19年9月)まで現行の規制値の2.1倍、その後20年1月(既存モデルは21年1月)までは1.5倍まで超過を認める移行措置が設けられた。

環境委では賛成40、反対9(棄権13)で規制案に反対する決議が採択された。決議案をまとめたヘルブランディ議員(オランダ選出)は「VWの不正問題を受けて排ガス試験の見直しが急務であるにもかかわらず、加盟国が(規制を緩める)移行措置の提案に合意したことは恥ずべきことだ」と強く非難。EU域内では大気汚染を原因とする健康被害で毎年43万人が寿命を全うできずに死亡していると指摘し、早急に排ガス試験を厳格化する必要があると強調した。

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