英のバイオマス発電促進支援策、欧州委が疑義

欧州委員会は5日、石炭火力発電所をバイオマス発電に転換するプロジェクトに対する英政府の支援策がEUの国家補助規定に違反していないか検証するための本格調査を開始したと発表した。再生可能エネルギーの推進を目的とした特定企業への公的支援がバイオマス発電市場における公正な競争を阻害していないか、EUルールに照らして調査を進める。

欧州委が問題視しているのは、イングランド北東部ノースヨークシャーにある英ドラックス社の石炭火力発電所をバイオマス専焼施設に転換するプロジェクト。同社は1970年代に稼働を開始した発電所のうち、1基を木質ペレット(おが粉などの廃材を圧縮成形したもの)を燃料とする発電施設に改修する方針で、英政府は昨年4月に補助金交付の計画を欧州委に申請していた。

欧州委は「EUとして再生可能エネルギー推進に向けた加盟国の取り組みを全面的に支持する」としたうえで、「EU国家補助規定は公的支援に制限を設けて特定の事業者が競争上で不当な利益を享受できないようにしている」と強調。バイオマス発電所が稼働した場合、年間3.6テラワット時の発電量が見込まれるものの、燃料として年間240万トンの木質ペレットが必要になるなどの試算に触れ、プロジェクトがもたらすエネルギー政策面のメリットより競争上のデメリットの方が大きくなる恐れがあると指摘。英政府の計画している公的補助の規模がプロジェクトを実現するうえで「必要な範囲内」に収まっているか、バイオ燃料市場で公正な競争が阻害される恐れはないかについて慎重に調査すると説明している。

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