中国化工が農薬最大手シンジェンタ買収へ

農薬世界最大手のシンジェンタ(スイス)は3日、中国の大手化学メーカー中国化工集団(ケムチャイナ)から買収提案を受けたと発表した。買収提示額は最大430億ドル超で、中国資本による国外企業の買収では過去最高。シンジェンタの経営陣は株主の利益に合致しているとして、買収提案の受け入れを促した。

ケムチャイナはシンジェンタを1株当たり480スイスフランで買収する考えで、そのうち465フランを現金で支払う。また、シンジェンタは5月に開かれるシンジェンタの株主総会で通常配当11フランの支払いを約束している。年末までの買収手続き終了を見込む。シンジェンタのミシェル・ドマレ取締役会長は、ケムチャイナの農薬事業は規模が比較的小さいと指摘。独禁当局の承認を獲得できるとの見方を示した。

シンジェンタに対しては昨年、米競合モンサントが買収を提案したが、シンジェンタは買収提示額が低く同社の価値を著しく過小評価しているうえ、農業化学の大手2社の統合は各国当局から認可されない恐れも高いとして受け入れを拒否。モンサントは買収を断念した。

だが、シンジェンタの株主の間からは買収提案の受け入れをかたくなに拒否した経営陣への批判が噴出。穀物価格の下落や新興国経済の不振など種子・農薬業界を取り巻く環境が悪化していることもあり、経営陣はケムチャイナの買収提案を受け入れたもようだ。ドマレ会長はケムチャイナの傘下に入ることで中国など新興国で事業を拡大できるほか、技術革新に向けた長期の投資も可能になるとメリットを強調した。本社はスイスにとどめる。

ケムチャイナは買収を積極活用して事業を拡大しており、昨年は伊タイヤ大手ピレリを獲得。今年1月にも射出成型機械製造の独クラウス・マッファイを買収することを明らかにした。

上部へスクロール