ボーナス上限規制、英が中小銀行への適用拒否

EU域内の銀行を対象とする賞与(ボーナス)規制をめぐり、英金融当局は2月29日、国内に拠点を置く中小の銀行に関しては、幹部行員のボーナスに上限を設ける規定を適用しない方針を欧州銀行監督機構(EBA)に通告したことを明らかにした。各行の規模に関係なく、一律に厳格な規制を適用するアプローチは「著しくバランスを欠く」と指摘し、EBAに対してEUルールの柔軟な解釈を認めるよう求めている。

EUは銀行の短期業績に連動した高額報酬制度がトレーダーなどの過度なリスクテイクを助長し、金融危機を招く一因になったとの反省から、2014年1月にボーナス規制を導入した。域内に本社や現地法人を置くすべての銀行の取締役、上級管理職、トレーダーなどを対象に、ボーナスの支給額を原則として年間給与と同額に制限するという内容で、株主の承認がある場合は年間給与の最大2倍が上限となる。

欧州最大の金融センターを擁する英国は当初からボーナス規制に反対しており、業界側からも規模の小さい銀行を規制の対象から除外するよう求める声が上がっていたが、EBAは最終的に、条件を一部緩和したうえですべての銀行に規制を適用する方針を決定。加盟国はEBAの指針に沿ってボーナス規制を適用するか、適用できない場合はEBAに理由を説明しなければならず、正当な理由がない場合、EBAはEU司法裁判所に当該国を提訴する可能性がある。

英中銀イングランド銀行の健全性監督機構(PRA)と金融行動監視機構(FCA)は声明で、幹部行員のボーナスに上限を設けるルールが導入されて以来、人材流出を懸念する多くの銀行が役職ベースの手当を支給するなどして定額報酬を引き上げているが、こうした手法は財務状態が悪化した場合の対応を難しくすると指摘。規模や金融システム全体に及ぼす影響を考慮せず、すべての銀行にボーナス規制を適用すれば、「こうしたリスクを増幅させることになる」と強調している。

英当局の発表を受け、欧州委員会のヒル委員(金融安定・金融サービス・資本市場同盟担当)は1日、規模の小さい銀行に対する規制のあり方について見直しを進めていることを明らかにした。同委員は英下院の特別委員会で演説し、「規模に関係なく、すべての銀行に対してボーナスに上限を設けるルールを適用すべきかどうか、比例性の観点から検討を進めている」と説明。そのうえで、中小の銀行についてはボーナスに上限を設けるより、支給を繰り延べする方が賢明なアプローチだとの考えを示した。

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