尿から農薬検出、ドイツ人ほぼ全員が該当

ドイツで生活する市民の尿にはほぼ例外なく、発がん性の疑いが持たれている農薬、「グリフォサート」が含まれていることが、緑の党系のハインリヒ・ベル財団が4日公開した調査結果で分かった。グリフォサートをめぐってはビールに高濃度で含まれているとの検査結果が2月下旬に発表されたばかり。欧州連合(EU)の欧州委員会は先ごろ、同農薬に発がん性はないとして域内での使用許可を15年間延長することを提案したが、フランスやイタリアが反対しており、加盟国からなる専門家委員会は決定を下せない状況に陥っている。

ハインリヒ・ベル財団はドイツ国内の市民2,009人を対象に尿検査を実施した。同国で過去に行われた同様の検査は参加者が100人未満にとどまっており、今回の検査はデータの信頼度が高い。

それによると、尿からグリフォサートが検出された被験者の割合は99.6%に達した。1リットル中に0.5マイクログラム以上含まれていた人も75%と多い。ドイツでは飲料水の許容上限が同0.1マイクログラムとなっており、市民の4人に3人は尿中の濃度でこれを少なくとも5倍、上回ったことになる。被験者の3分の1では1マイクログラム~4.2マイクログラムが検出された。

独連邦リスク評価研究所(BfR)は同調査結果について、濃度が低いうえ尿中のグリフォサートは短時間で体外に排出さるため、健康リスクはないとの見解を示した。ただ、グリフォサートが健康にもたらす影響についはこれまで十分に研究されておらず、ライプチヒ大学細菌・微生物研究所のモニカ・クリューガー元所長は『ヴェルト』紙に、更なる調査が必要だと指摘した。

ミュンヘン環境研究所が市販のビールで実施した調査では対象とした14銘柄すべてでグリフォサートが検出された。濃度は最高で1リットル当たり29.74マイクログラム、最低で同0.46マイクログラムとなっており、飲料水の許容上限値を大幅に上回った。BfRはビールを1日当たり1,000リットル以上飲まなければ問題のない水準だとの見方を示した。

グリフォサートについては発がん性の恐れがあるとする報告書を世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関が昨年3月に発表した。それ以降、EUでの使用許可を延長すべきかどうかをめぐって活発な議論が繰り広げられている。

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