墺大統領選で緑の党候補が薄氷の勝利、反移民政党への危機感が追い風に

オーストリアで22日に行われた大統領選挙の決選投票で、緑の党のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン候補が50.3%を獲得し、次期大統領に選出された。反移民を掲げる右派ポピュリズム政党・自由党(FPOE)のノルベルト・ホーファー候補も同49.7%に達しており、ファン・デア・ベレン候補の勝利は紙一重。ドイツなど欧州各国では昨年の難民急増を受けて移民排斥政党が急速に支持率を伸ばしており、欧州の既存政党は今回の選挙結果にひとまず安堵感を示している。

オーストリアの大統領選挙では一次投票で過半数を制する候補者がいない場合、決選投票が行われる。4月末の一次投票では2大政党である国民党(OEVP)と社会民主党(SPOE)の候補が得票率を大幅に落として惨敗。FPOEのホーファー候補が35.1%で1位となり、2位となった緑の党のファン・デア・ベレン候補(同21.3%)に大差をつけていた。

それにもかかわらず決選投票でファン・デア・ベレン候補が逆転勝利したのは、緑の党とOEVP、SPOEの支持層に加え、排外主義的な大統領の誕生に危機感を持った有権者が同候補に投票したためだ。これを反映し決選投票の投票率は72.7%となり、一次投票の68.5%から4.2ポイント上昇した。

オーストリアでは戦後、大統領はもっぱらOEVPかSPOEから選出されていた。だが、両党からなる大連立政権が昨年、難民受け入れに比較的寛容な姿勢を示したことを受けて、地方や低所得の有権者が離反。FPOEの躍進をもたらした。地方と労働者層ではホーファー候補の得票率がそれぞれ71%に達している。ファン・デア・ベレン候補は都市部の有権者の強い支持で大統領に選出された格好だ。

今回の選挙ではオーストリアの世論が移民・難民問題をめぐって2つに分裂していることが浮き彫りになった。ファン・デア・ベレン次期大統領はこれを踏まえ、ホーファー候補に投票した有権者の大半は現状への不満、怒りを選挙で表明したに過ぎず、右翼ではないと強調。大統領就任後はこうした市民の不安を取り除き国民の融和に努める考えを示した。

上部へスクロール