キャメロン英首相は5月18日、今後1年間の施政方針を発表し、自動運転車の実用化に備えて自動車保険制度を整備するため、新たな法案を策定する計画を明らかにした。現行の強制保険を拡充し、ドライバーがいない自動運転車が事故を起こした場合に車の所有者が補償を受けられるようにする。
自動運転車は2020年の実用化を目指して大手メーカーによる開発競争が加速している。30年後にはドライバーがいない完全自動運転車のシェアが世界全体で50%を超えるとの試算があり、交通事故の減少や渋滞の緩和など、さまざまな恩恵が見込まれている。しかし、実用化に向けた法整備や自動車保険制度に関する議論は開発のスピードに追いついていないのが実情で、たとえば自動運転車が事故を起こした場合、その責任は所有者とメーカーのいずれが負うべきか、自動運転車と従来型の自動車の間で事故が起きた場合、過失割合をどのように決めるべきかなど、解決しなければならない課題が山積している。
キャメロン首相の施政方針は、エリザベス女王が英議会の開会式冒頭で読み上げた。1年以内の策定を目指す20以上の法案のなかで、輸送分野については「自動運転車を含む新たな輸送システムの技術開発」で英国が主導的立場を維持するため、関連法の整備を急ぐ必要があると指摘。自動運転車が事故を起こした場合の補償を強制保険でカバーするためのルールを「輸送近代化法案(Modern Transport Bill)」に盛り込む方針を示している。
英国では現在、国内4カ所で自動運転車の走行試験が行われており、年内に路上での実証実験が開始される見通し。運輸省の報道官は、自動運転車の所有者に自動車保険への加入を義務づけ、事故が起きた場合に所有者が保険金を請求できる仕組みを整える必要があると説明。近いうちに法案の詳しい内容を明らかにすると述べた。