ブルガリアで企業が労働力の確保に苦労している。低賃金等を理由に年間4万人が国外へ流出することや、専門知識を持つ労働者の不足などが背景にあり、高い失業率にもかかわらず企業が必要とする従業員を探すのは困難になっている。
現地紙『ノヴィニテ』によると、同国における労働力は自動車産業に限っても2万人が不足している。他の産業においても適切な労働者の確保が難しいと感じている企業が多い。ブルガリア商工会議所によると、エンジニア、プログラマー、トラック等の運転手、料理人など190に上る専門職において労働者が不足している。一方で同国の失業率は約10%と高い。
理由の1つに年間4万人にも上る国外への労働力の流出がある。経済協力開発機構(OECD)によれば2002‐12年の間に同国の労働力人口の10%が失われた。このまま行くと2050年に同国の人口は現在よりも300万人少ない400万人にまで落ち込むと見られている。
国外への移民が続く背景には同国の低い給与水準がある。欧州委員会統計局(ユーロスタット)によると同国のフルタイム労働者の年平均給与は4,000ユーロ。しかし同国のコンサルティング会社、経済調査研究所によれば欧州連合(EU)全体の平均給与水準の半分に達するのは2030年までかかると見られている。
もう1つの課題は労働力の質の問題だ。すべての失業者がスムーズに専門職に就けるわけではない。
移民の増加と共に海外からの送金も増加している。EU加盟を果たした2007年に比べ2015年の送金額は倍増した。しかしこうした金は消費に費やされ、教育など長期的な投資に回ることは少ない。
著名投資家ジョージ・ソロスのオープンソサエティ財団が昨年発表した調査によると、同国の労働可能人口の約40%は就業もしておらず、職業訓練も受けていない。