自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)はグループの長期経営戦略「トゥゲザー‐シュトラテギー2025」を発表した。モビリティのあり方が今後大きく変わっていくことを踏まえ収益の新たな柱を構築していく考えで、電気自動車(EV)の生産・販売を大幅に拡大する。また、EVの中核部品である電池、およびデジタル化、自動運転を技術の重点強化分野に据えた。
世界の自動車市場では現在、ガソリン車とディーゼル車が大半を占める。だが、環境・温暖化問題や将来の石油資源枯渇を受けて、今後はEVなど環境対応車の重要性が高まると予想されている。
VWはこれを踏まえ、2025年までにEVを30モデル以上、市場投入する方針を打ち出した。台数ベースで同年に200万〜300万台を販売する考え。VWグループの販売総数の約20〜25%を占める計算で、ディーゼル車とガソリン車の比率は減少することになる。
アジアを中心に大きな需要が見込まれる低価格車については同地の企業と提携して市場を開拓していく。提携交渉はすでに進んだ段階に達しているという。
自動運転については自動車各社のほか、グーグルやアップルなどの米IT大手も精力的に開発を進めている。今後の競争力のカギを握る技術であり、VWは今回、自動運転とそれに欠かせない人工知能(AI)を自社で独自開発することを決めた。運転者となるAI「自動運転システム(SDS)」を今後10年で開発し当局の承認を得ることが目標だ。
VWは車載電池をこれまえアジアのサプライヤーから調達してきた。だが、EVでは電池が中核部品となることから、今後は自らも開発・生産に乗り出す考えを示した。ただ、プレスリリースには「原則的に戦略的なオプションを検討する」と書かれていることから、提携を視野に入れているとみられる。
商用車分野ではスカニア、MAN、VWブランド商用車の連携を緊密化しシナジー効果を引き出す考えを明らかにした。また、商用車を単に製造する企業から情報通信技術を駆使した輸送ソリューションの提供者へと進化する方針を打ち出した。
アプリを利用した配車サービスやカーシェアリングなどモビリティの新たな潮流もグループの成長に活用する考えで、そうしたモビリティ・ソリューション事業の売上高を25年までに10億ユーロ規模に拡大する目標を明らかにした。
VWはこれらの目標を実現するためには100億ユーロのケタ台の投資が必要になるとの見方を示した。投資資金は事業効率の改善とモデル数の削減を通して確保する考えで、現在およそ340あるモデルバリエーションを地域市場と顧客ニーズを踏まえて絞り込んでいく。
事業効率改善に向けては特に、同社最大の事業規模を持つVWブランド乗用車にメスを入れる。収益力が低く、グループ全体の足かせとなっているためだ。
売上高営業利益率は15年の6.0%から25年までに7〜8%へと引き上げる目標。