EU加盟国と欧州議会、欧州委員会は22日、EU全体で域外との国境警備にあたる「欧州国境沿岸警備隊」を創設することで基本合意した。欧州への難民や移民の無秩序な流入を抑えるとともに、テロリストらの侵入を防ぐため、既存の「欧州対外国境管理協力機構(フロンテクス)」より強力な権限を持つ警備隊を創設し、EU主導で域外との国境警備を強化する。7月中に欧州議会本会議で採決を行い、加盟国の正式な承認を経て今夏の始動を目指す。
欧州では中東やアフリカから多くの難民や移民が押し寄せるギリシャなどで国境管理が機能不全に陥り、加盟国ごとの対応が限界に達したため、欧州委員会が昨年12月に警備隊を創設する構想を打ち出した。フロンテクスは加盟国による国境警備の調整が主な役割で、独自の人員や物資を持たず、当事国からの要請がなければ介入できないため、緊急時に迅速かつ効果的に活動できないという欠陥があった。
新たに創設される警備隊は1,500人規模の常設部隊を持ち、必要な機材や物資を常時確保して、緊急時には10日以内に配備できる体制を整える。今後も各国当局が日常的な国境管理を担うが、域内の各地域に「連絡事務所」(最大4カ国を管轄)を置いて難民や移民の流入状況などを常時監視し、緊急時には警備隊が国境警備に介入して難民や不法移民の送還を支援する。
一方、東欧諸国などが国の主権にかかわる国境管理への介入拡大に難色を示していることから、ある加盟国が警備隊への協力を拒否した場合、他の加盟国が一時的に入国審査を復活できる仕組みを導入することで合意した。