スロバキアの経済成長が続いている。2004年の欧州連合(EU)加盟後の国内総生産(GDP)は年平均4%増とEU域内で最も高い成長率を記録してきた。その背景には自動車をはじめとする海外大手企業による現地生産の進展とEU諸国等に向けた輸出の著しい伸びがある。これまで成長を牽引してきた自動車産業のみならず、最近では金属、化学及びソフトウェア産業なども伸びてきている。
同国で最も重要な製造業となっているのは自動車と電子機器だ。スロバキア自動車工業会(SAP SR)によると同国の工業生産高に占める自動車産業の割合は2010年の30%から15年には44%まで上昇した。人口1,000人あたりの自動車生産台数は190台と世界で最も多い。同国には独フォルクスワーゲン(VW)、韓国の起亜自動車、仏PSAプジョー・シトロエンが進出している他、18年にはジャガー・ランドローバー(JLR)が年間30万台の生産を開始することを予定している。また自動車部品産業の成長も著しく、現在340の自動車部品メーカーがある。
電気・電子機器ではEU加盟以降、特にディスプレイや薄型テレビの組立工場が多く進出した。台湾のフォックスコンと韓国のサムスンが現地生産を行っている他、家電の米ワールプール、パナソニック、ドイツのBSHも工場を持つ。しかしこうした製品は景気の影響を受けやすい上、輸入部品を利用しているためイノベーションが生まれる余地が小さいという課題がある。
また自動車の生産量が増加するにつれ関連部品を生産する金属加工部門も大きく伸びてきた。近年では化学工業の生産も拡大している。こうした各部門の伸びによりスロバキアの製造業は同国経済の付加価値の5分の1を占めるところまで成長した。
製造業以外ではソフトウェア産業も伸びており、首都ブラチスラバや東部のコシツェには海外企業が進出しプログラミングやサービスの拠点を置いている。
その他には観光業が伸びている。2015年には旅行者の数は430万人に達し過去最高となった。
建設業は過去6年間低迷していたが受注高は再び2桁の成長率に戻った。住宅、産業、インフラ関連が好調だった。
同国の課題には経済の東西格差がある。首都ブラチスラバを中心とする西部を中心に産業が立地しており、ブラチスラバ県のみで同国GDPの4分の1を産出する。情報技術(IT)産業のある東部のコシツェなど一部例外はあるものの、東部地域全域の開発のためには高速道路などインフラの整備が待たれるところだ。